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目次(IV. 内臓学)

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  1. 右心室から出る肺動脈A. pulmonalisは静脈血を運び、右枝と左枝に分かれてそれぞれの肺に入る。肺動脈の多数の枝は気管支の分枝に沿って進み、最終的に肺胞壁で終わる。個々の肺胞の境界を取り巻く動脈輪Arterienkreisは、隣接する動脈輪と連結している。この輪状動脈から極めて密な毛細血管網が始まる(図220(肺胞壁の毛細血管網))。毛細血管網は各肺胞の壁内に存在し、ここを通過する血液は拡散作用により肺胞内の空気と交換を行い、酸素を吸収して二酸化炭素と水蒸気を放出する。毛細血管網から始まる静脈は、酸素化された血液を送り返す。細い静脈は、特に肺表面付近では気管支と並走せず単独で走行し、周囲の静脈と多数の吻合を形成しながら、より深部で初めて気管支の分枝に伴走する。静脈はさらに集合して太い枝となり、肺動脈の前下方で肺門に達する。

    肺門では左右とも通常2本の幹、すなわち右肺静脈と左肺静脈Vv. pulmonales dextrae et sinistraeに集まり、その血液は心臓の左心房に流入する(第1巻の脈管学を参照)。

  2. 肺は肺動脈の他に、特殊な栄養血管として気管支動静脈Vasa bronchialiaを有する。この点で肺は肝臓に類似しており、後者では肝門から太い静脈の流れと細い動脈の流れが入る。気管支動脈Aa. bronchalesは直接または間接的に大動脈から分岐し、各側の肺門から1〜3本が入り、3つの領域に分布する:a) 気管支樹の壁と血管壁、および気管支リンパ節;b) 小葉間中隔;c) 胸膜下枝として粗大および微細な網を形成し胸膜に分布する。

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[図219]肺胞壁(ヒト):肺胞表面の切片;約800倍

網状構造をなす毛細血管の一部は切断され、一部はその管壁の断面が見える。黒色部分は毛細血管の基底膜(灰色)に含まれる銀好性線維、青色部分は被蓋細胞を示す(M. Clara, Z. mikr.-anat. Forsch., 40. Bd., 1936)。

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[図220]肺胞壁の毛細血管網(ネコ)100倍

肺胞壁の毛細血管網を表面から観察したもの。

気管支樹の末梢部では、気管支動脈と肺動脈の終枝との吻合が見られ、また肺静脈との動静脈吻合も多数存在する。気管支静脈Vv. bronchalesは、肺胞管や細気管支の毛細管からではなく、気管支樹の様々な大きさの枝から血液を受け入れている。気管支静脈は気管支動脈ほど肺内で広範囲に分布していない。これは、気管支動脈によって肺に導かれた血液の一部が肺静脈へ移行するためである。肺動脈の枝と気管支静脈の間の動静脈吻合はV. Hayek(Z. Anat. Entw., 112. Bd., 1942)により記載されている。気管支静脈は肺根に集まり、右は右縦胸静脈に、左は通常第3肋間静脈の幹に開口する。

3.リンパ管は、浅層の密な胸膜下リンパ叢subpleuraler Plexusと、深層にある肺胞管間および肺小葉間のリンパ管網、さらに気管支樹の壁に属する網から構成されている。リンパ管は比較的太い気管支に沿って存在する気管支リンパ節Lymphonodi bronchalesに至り(気管支肺リンパ節Lymphonodi bronchopulmonalesとすべきであろう。(小川鼎三))、さらに肺根で肺リンパ節Lymphonodi pulmonales に入る(気管支リンパ節Lymphonodi bronchalesとすべきであろう。(小川鼎三))。肺根からの左側リンパ管は、大部分が直接胸管へ開き、一部は左の内頚静脈と鎖骨下静脈の間の「静脈角Venenwinkel」に開口する。右側のリンパ管は右気管支縦隔リンパ本幹に集まる。下葉から来るリンパ管は後縦隔リンパ節に入る。

4.肺の神経は迷走神経と交感神経に由来し、後部および前部肺神経叢plexus pulmonalis dorsalis et ventralisを形成して肺門から入る。神経は無髄線維と有髄線維から構成され、神経叢内には多数の小さな神経節が存在する。これらの神経は主に気管支樹や血管の筋肉、および粘膜に分布している。

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[図221]肺小葉気管支と動脈および静脈

27歳男性の上下肺。褐色部分は弾性組織を示す。

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[図222]甲状腺の小葉 (37才の男)

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