(RK662(腹大動脈とその主な枝)、RK666(下腸間膜動脈の分枝)、RK669(骨盤右半分の動脈分枝(左側面図)))
これは細長い動脈で、通常、腎動脈のやや下方、大動脈前壁の正中線近くから始まる。腰筋の前面を下外側に進み、尿管と斜めに交差し、最後に外腸骨動脈と交差して鼠径管に達する。そこで下腹壁動脈の枝である挙睾筋動脈 A. musculi cremasteris と吻合し、精管に達した後、他の精索成分とともに陰嚢に至る。精巣の間膜縁で複数の枝に分かれ、精巣の線維性被膜を貫いて精巣実質内に入る。
これらの枝の一つは精巣上体の尾部に至り、内腸骨動脈由来の精管動脈 A. deferentialis と吻合する。
女性では、この動脈は卵巣動脈 A. ovarica となる。男性の場合よりはるかに短く、腹腔内にとどまる(RK668(**女性の骨盤動脈(左側)**右側から見た図))。骨盤縁から内側に向かい、蛇行しながら子宮広間膜の両葉間を卵巣の付着縁に進み、ここで3本の枝に分かれる。1本は卵巣の卵管端で卵巣内に入る。2本目は外側に向かって卵管膨大部に伴走する。3本目が最も太く、内側に向かい子宮動脈の太い枝とともに卵巣の付着縁で卵巣動脈弓 Eierstockarkade を形成し、その凸側縁から太い動脈が卵巣門に入る。また、比較的細い枝が子宮円索とともに鼠径管に入る。
発生過程で精巣と卵巣がまだ腰部にある間は、精巣(卵巣)動脈は短い。その後、生殖腺が下降し位置が変化するのに伴い、動脈は徐々に著しく長くなる。
**変異:**時として左右の精巣動脈が1本の共通幹から始まることがある。また、片側または両側に2本の精巣動脈があり、これらが共に大動脈から出ている場合や、1本が大動脈から、もう1本が腎動脈から出ている場合がある。
また、精巣動脈が単一で、しかも腎動脈から出ている場合もある。この変異は右側でより多く見られる。