https://funatoya.com/funatoka/Rauber-Kopsch.html
大腿神経は3根をもってLII・LIII・LIVから起こり、第4の根がおそらくLIより発する。太くて扁平な幅5~6mmの1幹をなし、この幹は大腰筋と腸骨筋との間を通り、鼡径靱帯の下で筋裂孔内を大腿動静脈の外側を走って大腿に達する。
大腿に移行すると、この神経は次第に腸腰筋の内側面に達し、鼡径靱帯より4~5cm下方で多数の枝に分かれる。その一部は運動性の枝であり、一部は知覚性の枝である。
知覚性の枝は大腿前面の全体に分布し、運動性の枝は大腿の伸筋、大腰筋、恥骨筋に達する。終枝に分かれる前に、この神経から次の枝が出る:
若干の前皮枝Rami cutanei ventrales、腸骨筋の骨盤内にある部分への2~4本の枝、大腰筋への1枝、および固有大腿動脈神経N. arteriae femoralis propriusである。固有大腿動脈神経はすでに骨盤腔内で大腿神経より分かれ、この神経とともに走り、鼡径靱帯より下方でこれから離れ、大血管の鞘に沿って下行する。大腿深動脈に伴走するその小枝のうち1つが栄養孔を通って大腿骨の内部に入り、他は骨膜に入る。恥骨筋への神経は大腿動静脈の後ろでこの筋の前面に達する。大腿神経の終枝は次のとおりである:
a)前皮枝Rami cutanei ventrales
図552(**右下肢の皮神経分布領域:**後面)、553(**右下肢の皮神経分布領域:**前面)
多数の枝であり、様々な場所で大腿筋膜を貫く。これらの枝のうち一部は縫工筋を貫いている。
その多数の枝は次のように走行する:
α. 大腿の前面の中央部へ2本の枝が行く。1本は縫工筋に1枝を与え、多くはこの筋をその上部1/3で貫き、次いで大腿筋膜を貫き、大腿直筋の前を下行して膝にまで達する。他方は初めは前者と合していることもあり、ごくまれにしか縫工筋を貫かず、多くの場合この筋の内側面で皮膚に達し、膝にまで進む。これら両枝は大腿枝(陰部大腿神経の)としばしば結合している。β. 大腿の前面の内側部への枝が多くは2~3本ある。そのうちの1本は筋膜を卵円窩のすぐ下方で貫き、大伏在静脈に沿って走り、膝にまで追跡される。これは通常、閉鎖神経の皮枝と結合する。
より太い第2の神経は、しばしば2本に分かれ、縫工筋の内側縁に沿って下方に走り、膝蓋骨の上方で筋膜を貫き、膝の内側面の皮膚内に広がる。
b)筋枝Rami muscularesは大腿の伸筋に至る。
詳細は次のとおりである:
α. 大腿直筋への1枝。この枝および若干の別の筋枝から細い小枝が出て股関節の関節包に達する。β. 外側広筋への1枝。γ. 中間広筋への若干の枝。これらの枝のうち下方のものは膝関節筋をも支配するが、かなり太い枝がこの筋の範囲を越えて、骨膜および膝関節の関節包に至る。δ. 内側広筋への1本の神経。これもまた1本の顕著な終枝を膝関節の関節包に送っている。
c)伏在神経N. saphenus
伏在神経は大腿神経の最も長い枝であり、初めは大腿動脈の外側面にあり、さらに下方では大腿動脈の前面に接し、大腿動静脈とともに内転筋管に入る。広筋内転筋板Lamina vastoadductoriaを貫いて、縫工筋に覆われて内側広筋と大内転筋との間の溝を下行し膝の内側面に達する。ここでは縫工筋の腱のところで皮下に達し、大伏在静脈に接して、この静脈に沿って下腿の皮下をさらに下方に進み、脛骨躁の前を通り、足の内側縁の皮膚内に放散して終わる。その枝の1本がここで浅腓骨神経と結合している。伏在神経は母指にまで達することなく中足骨の領域で終わることが多い。1本の枝を膝関節に与えるほかに次の枝を出している:
α)膝蓋下枝Ramus infrapatellarisは膝の内側面から膝蓋骨の前面までの皮膚に達する(図555(右大腿前面の皮神経))。
β)内側下腿皮枝Rami cutanei cruris tibiales、内側の前枝と内側の後枝があり、これらは脛骨の内側面を覆う皮膚と腓腹部の内側面の皮膚に分布する。
まれに、伏在神経が膝の位置で終わり、下腿では脛骨神経の一枝がその役割を担って分布することがある。
[図555] 右大腿前面の皮神経(3/8)