腎動脈は太い動脈で、上腸間膜動脈の起始より約1~2cm下方で分岐する。右腎動脈は左よりもしばしば上方で起こる(Heidsieck)。また、大動脈が左に偏位しているため、右腎動脈は左よりもやや長い。
左右の腎動脈はほぼ直角に大動脈から出て腎臓へ向かう。右腎動脈は下大静脈の後方を通過する。両側の腎動脈は、それに平行する腎静脈によって前方から覆われている。腎門に入る前に、左右それぞれ4~5本の枝に分かれ、これらの枝の多くは静脈と腎盂の間に位置する。
腎動脈は腎臓に入る前に、1本以上の小枝を腎上体に与える。これを腎上体枝Rr. suprarenalesという。また、腎臓の脂肪嚢にも同様に複数の小枝を送る。
**変異:**腎動脈が最初から1本の幹として出ず、様々な数の枝で代替されることがある。この場合、同一個体で左右の腎動脈が大きな非対称性を示すことがある。多数の起始を持つ場合、それらが互いに1列をなして並ぶのが一般的である。腎臓が下方にある場合、腎動脈は主に大動脈の下部から、時には総腸骨動脈から出ることもある。腎臓の位置が正常でも、総腸骨動脈が腎動脈の1つを出すことがある。また、左右の腎動脈が大動脈の前面から1本の共通幹として始まったり、1本の腎動脈が内腸骨動脈から始まる例も少数観察されている。しばしば、腎動脈の少数の枝が腎門以外の場所で腎実質に入ることがある。