(RK673(大腿動脈とその枝(I))、RK674(大腿動脈とその枝(II))、RK675(**臀部と大腿の動脈(右):**後面))
この動脈は大腿動脈とほぼ同じ太さで、通常鼠径靱帯より3~4cm下方の大腿動脈外側壁から分岐し、大腿部の主要な栄養血管となる。
最初は大腿動脈の外側に位置するが、その後方を通って下降し、内転筋群と内側広筋の間で深部に達する。大腿深動脈の終末部は長内転筋と大内転筋の間に入り、第3穿通動脈という終枝となる。起始直後に大腿前方部の諸筋に小枝を与えるほか、以下の主要な枝を分岐する。
a) 内側大腿回旋動脈 Arteria circumflexa femoris medialis
この動脈は外側大腿回旋動脈より細く、内転筋群の上方を腸腰筋と恥骨筋の間を通り、大腿骨頚の内側面に沿って内側後方に進む。大転子窩に達し、そこで外側大腿回旋動脈の枝と吻合する(RK673(大腿動脈とその枝(I))、RK675(**臀部と大腿の動脈(右):**後面))。
外閉鎖筋とともに後方に進み、その腱の部位で2本の主枝に分かれる。浅枝 Ramus superficialisは短内転筋、大腿薄筋、外閉鎖筋に分布する。深枝 Ramus profundusは小転子の下を後方に進み、大腿方形筋、大内転筋および屈筋群を栄養する。しばしば深枝は1本の寛骨臼枝 Ramus acetabularisを分岐し、閉鎖動脈の同名枝とともに、あるいはその代わりとして寛骨臼切痕を通って股関節に分布する。
b) 外側大腿回旋動脈 Arteria circumflexa femoris lateralis
これは太い枝で、大腿深動脈の外側壁からこの動脈の起始の近くで分岐する。縫工筋に覆われ、大腿神経の枝の間に位置し、大転子の下方を外側に向かう。上行枝 R. ascendens と下行枝 R. descendens を出し、横方向に進んで中間広筋の上を越え、外側広筋を貫いて大転子の下で骨に達する。後方で内側大腿回旋動脈、上下の両殿動脈および大腿動脈の後方筋枝と吻合する (RK673(大腿動脈とその枝(I))、RK674(大腿動脈とその枝(II)))。
α. 上行枝 R. ascendens は縫工筋と大腿直筋に覆われて上方に向かい、大腿筋膜張筋の下で終わる。
β. 下行枝 R. descendens は太い枝で、1本のこともあれば、しばしば2本以上に分かれる。大腿部の前面で大腿直筋の後ろで分枝し、筋群の中を通って、その一部は膝関節にまで達する。
c) 穿通動脈 Arteriae perforantes
(RK673(大腿動脈とその枝(I))、RK674(大腿動脈とその枝(II))、RK675(**臀部と大腿の動脈(右):**後面))
穿通動脈は大腿深動脈の終枝を含めて3〜5本あり、内転筋群の大腿骨への停止部を貫いて大腿骨の後面に達する (RK566(大腿の筋群(前内側からの図)))。
α. 第1穿通動脈 A. perforans prima:穿通動脈が3本しかない場合、これが最も太い。恥骨筋の停止の下方で短内転筋と大内転筋を貫いて走り、これらの両筋と大腿二頭筋に枝を与える。また近位大腿骨栄養動脈 A. nutricia femoris proximalis を大腿骨上部の栄養孔を通してこの骨の内部に送る。
β. 第2穿通動脈 A. perforans secunda:この動脈は短内転筋の下方で大内転筋を貫いて大腿部後方の筋群に広がる。
γ. 第3穿通動脈 A. perforans tertia:大腿深動脈の終枝で、長内転筋の停止の下方で大内転筋を貫く。遠位大腿骨栄養動脈 A. nutricia femoris distalis という1本の太い動脈を大腿骨の内部に与え、大腿部後方の筋群下部、特に大腿二頭筋に分布する。これらのすべての枝は互いに連絡し、また近接する動脈とも吻合している。