[図462]延髄の横断面VII
(高さについては図459(延髄、橋、および中脳の各横断面の位置を示す図)を参照)
この断面では、左側が第四脳室外側陥凹Recessus lateralis ventriculi quartiを通過し、右側ではこの陥凹の上方壁が切線状に切られている。有髄神経線維は黒色、神経細胞は赤色で表示されている。
この断面は第四脳室外側陥凹の上方部分を通過し、右側では外側陥凹の上方壁が接線状に切られている。第四脳室外側陥凹の外側壁は片葉柄により、内側壁は索状体とその上にある内耳神経の諸核により形成されている。上方の壁も蝸牛神経の終止核によって構成されている。この断面では舌下神経核は見られず、その位置にある神経核群は舌下神経前位核Nucleus praepositus n. hypoglossiと呼ばれる。内側隆起核はここでもなお存在している。
菱形窩の灰白質のその他全領域は前庭神経内側核(三角核)Nucleus terminalis medialis (triangularis) n. vestibuliである。蝸牛神経腹側核Nucleus terminalis ventralis n. cochleaeは索状体の腹方に位置し、舌咽神経が延髄に入る部位にまで及んでいる。これら両核は蝸牛神経背側核Nucleus terminalis dorsalis n. cochleaeによって連続しており、この背側核が索状体の外面と第四脳室外側陥凹の上壁を覆っている。
孤束Fasciculus solitariusはこの付近で終止する。これは舌咽神経と迷走神経の下行性線維から構成されているため、両神経の根線維が入る高さよりも上方では存在しない。この高さでは舌咽神経の上部線維束が脳に入っている。一方、前庭神経下行路Radix descendens n. vestibuliはさらに発達を続ける。
両方の副オリーブ核はもはや存在しないが、オリーブ核Nucleus olivaeはここでもなお顕著に発達している。そのため、オリーブ小脳路と歯状核オリーブ路に属する多数の線維束が三叉神経脊髄路と交差し、さらに背方へ進んで索状体に達する。
髄条Striae medullares(図421(菱形窩の表面像)、図422(脳幹、四丘体付近、菱形窩) )(髄条Striae medullares Piccolomini、Bodenstriaeは蝸牛神経の中心経路の一部である聴条Striae acusticae Monakowとしばしば混同されるが、本書もそれを混同している。ピッコロミニ髄条は動物脳には見られず、人脳にのみ存在し、その走行により肉眼的に3型に分類される。その本質は小脳と延髄および橋の網様体や縫線を結ぶものであり、聴神経とは直接関係がない。モナコフ聴条は聴覚路の一部であり、人のみならず、全ての哺乳動物に存在する。本図では後者は左右とも索状体と蝸牛神経背側核の間に縦断された線維群として見られるが、特に名称は付されていない。(小川鼎三:脳の解剖学、32~39、127、1956;小川鼎三、細川宏:日本人の脳、222~223、1953)。)はこの断面の両側に見られる。これは蝸牛神経背側核の神経突起から成り、この線維群が縫線に達してここで交叉する。