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[図460] 延髄の横断面V

(高さについては図459(延髄、橋、および中脳の各横断面の位置を示す図) を参照)。

オリーブの中央を通る断面。矢印は菱形窩正中溝(Sulcus medianus fossae rhomboidis)を示す。有髄神経線維は黒、神経細胞は赤で表示。

この断面はオリーブのおよそ中央を通っている。菱形窩正中溝のすぐそばの灰白質には大きな舌下神経核があり、そこから出る根線維は2~3本の束をなして白網様質と灰白網様質の境を斜めに外側腹方へ走り、オリーブと錐体の間で前外側溝から外に出る。

舌下神経核の背方には小細胞性の内側隆起核Nucleus eminentiae medialis(以前はNucl. funiculi teretisと呼ばれた)があり、外側には介在核Nucleus intercalatusがある。

灰白翼の範囲にある灰白質には灰白翼核Nucleus terminalis alae cinereaeがある。この核の背外側にはすでに前庭神経内側核Nucleus terminalis medialis n. vestibuliが現れている。

後索内側部核Nucleus partis medialis fasciculi dorsalisはもはや見られないが、後索外側部核Nucleus partis lateralis fasciculi dorsalisはなお存在している。三叉神経脊髄路核Nucleus terminalis tractus spinalis nervi trigeminiは前の断面より小さくなっているが、三叉神経脊髄路はさらに発達している。三叉神経脊髄路は迷走神経の根線維とオリーブ核から出た線維によって貫かれ、少数の束に分けられている。

索状体は著しく強大となり、この断面の側方に目立つ隆起を形成している。孤束Fasciculus solitariusとその核は前述の断面よりもさらに発達している。孤束の背外側には横断された大小様々な多数の神経線維束が現れており、これらは総称して前庭神経下行路Radix descendens n. vestibuliと呼ばれる。その線維束間の灰白質塊は前庭神経下核Nucleus terminalis spinalis n. vestibuliである。

疑核Nucleus ambiguusは右側でやや明瞭だが、左側ではほとんど認められない。背側副オリーブ核Nucleus olivae accessorius dorsalisは前より大きく、明確に境界されている。内側副オリーブ核Nucleus olivae accessorius medialisはむしろ毛帯の範囲にある。オリーブ核Nucleus olivaeは強く襞を形成し、内側に開いた灰白質の板である。その開口部はオリーブ核門Hilus nuclei olivaeと呼ばれる。オリーブ核門を出入りする縦断された強い線維束群は、主にオリーブ核細胞の神経突起である。これらは対側に渡り、側索を通過後、太い束となって三叉神経脊髄路を貫くか、あるいは他の線維束とともにその傍らを通過して索状体に達し、ここで上方へ向きを変える。これがオリーブ小脳路Tractus olivocerebellaresである。この線維束の一部は歯状核細胞の神経突起でもあり、同側および対側のオリーブ核に達する。これが歯状核オリーブ路Tractus dentatoolivaresである。

オリーブ核Nucleus olivaeの線維結合の概観

オリーブ核に入る伝導路は:1. 脊髄オリーブ路Tractus spinoolivaris(323頁および図405(脊髄における種々の伝導路の領域を示す(模型図)) )、2. 小脳オリーブ路Tractus cerebelloolivares。後者には次の2つがある。a) 歯状核オリーブ路Tractus dentatoolivaris:結合腕の線維の側枝からなるカハール外側下行小脳束Cajals laterales absteigendes Kleinhirnbündel、b) 室頂オリーブ路Tractus fastigioolivaris:すなわち虫部オリーブ路Wurm-Olivenbahn (Held)で、室頂核(?)から来る。

オリーブ核から出る伝導路オリーブ脊髄路Tractus olivospinalis(323頁および図405(脊髄における種々の伝導路の領域を示す(模型図)) )とオリーブ小脳路Tractus olivocerebellaresである。後者はオリーブ核から出る線維が小脳半球に、副オリーブ核から出るものは小脳虫部と片葉に至る。