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目次(IV. 内臓学)

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(図202(喉頭、気管、気管支およびその主要分枝の前面図)図203(気管とその分枝)、203a(気管分枝の模型図)図204(喉頭、気管および気管支とその主要分枝:後面図)図210(肺根:前方から剖出したもの)、211(上下の気管支樹およびリンパ節) )

気管は右と左の気管支に分かれ、この2つは56〜90°の角度を作って互いに離れていく。その角度の平均は70.4°である。左右の気管支の幹Stammbronchusは肺底の後部に向かって次第に細くなりながら走っている。つまりこの幹は肺の軸に沿わず、それより後方に逸れている。また、まっすぐには走らず弧を描いており、その弯曲の仕方が左右で異なる。

右側の幹はほぼまっすぐで、正中面からの距離がより少なく、わずかにC字形に曲がっている。この特徴と、右の気管支がより太いこと(右2.2cm:左2cm)から、気管分岐部より奥に入る異物がたいてい右の気管支に達することが説明できる。

左の気管支の幹は明らかにS字状に曲がっている。大動脈弓がその上を越えて走るため、この幹は正中面に向かって凸の弓を成し、これが上半分の弯曲部となる。それより下方では心臓の位置が左に偏っているため、正中面に向かって凹の曲りを示し、そこがこのS字の下半分の弯曲部に相当する。

気管支の幹からは気管支枝Rami bronchales, Seitenbronchiが分岐して出る。気管支枝は下方から出るものほどより下方に向かう。気管支枝には前方のものと後方のものがあり、前枝の方がずっと太くて外側から前方に進み、後枝は後方に向かう。

左肺の気管支の幹は4〜5cm走ってから4本の前枝と4本の後枝を出している。第1の前枝だけが上葉に分布し、第2、第3、第4の前枝と4本の後枝がすべて下葉に分布している。左の気管支枝はすべて肺動脈左枝よりも下方で出ているため、動脈下気管支hyparterielle Bronchiと呼ばれる。

右肺の気管支の幹は2.5〜3cm走ってから1本の太い気管支枝を出し、これは肺動脈右枝よりも上方にある。したがって動脈上気管支枝eparterieller Bronchusと呼ばれる。そのほかのものはすべて動脈下気管支枝である。動脈上気管支枝は右肺の上葉に分布している。それに続いて左肺と同じく4本の前枝と4本の後枝が出ており、第1の前枝が中葉に分布し、第2ないし第4の前枝および4本の後枝がすべて下葉に分布している。右肺にはHerzbronchus(心臓気管支)という特別の気管支枝がある。これは第2の前枝の高さで始まり内側に向かって下葉の実質中に入っている。この枝が心臓気管支と呼ばれるのは、それが少数の哺乳動物の肺において分離しているLobus infracardiacus(心下葉)に分布する気管支枝と相同のものであるからである。

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[図210]肺根 前方から剖出したもの.

[図211]上下の気管支樹Bronchalbaum,およびリンパ節(Sukiennikowによる. Corningから引用)

P, P 肺動脈;d1-d4第1ないし第4の後気管支枝;v1-v4第1ないし第4の前気管支枝.

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[図212] 肺根:後方から剖出したもの。

[図213] 呼吸細気管支から肺胞管への移行部の模型図

a 細気管支、bc 肺胞管、i 肺胞(肺胞間中隔あり)、e 胸膜の被覆

[図214] ネコの肺胞壁における呼吸上皮と毛細血管の模型図(Elenzによる)×350

気管支枝を動脈上と動脈下に分類することは、局所解剖学的には意味があるが、形態学的には重要性が低い。この区別を過度に重視する傾向があるが、これを基に形態学的な理論を構築するのは適切ではない。