骨の発生について述べたので、様々な型の骨発生において、若い骨原基がどのような現象に基づいて長さと太さを増していくかが明らかになった。長さが伸びる時も太さが増す時も、骨芽細胞によって新しい骨質が絶えず付加され、積み重ねられていく。すでに形成された骨組織が、例えば骨細胞の分裂などによって膨張することはない。つまり、骨の成長は付加成長(appositionelles Wachstum)であって、間質成長(Interstitielles W.)あるいは内部増殖的成長(intussusceptionelles W.)ではない。この点は化生型においても同様である。一度できあがった骨組織は硬すぎて、各部分の「ゆるみ」や「ずれ」によって成長することは不可能である。
しかし、胎児や子供の骨(もちろん骨組織からなる場合)を成人の完成型と比較すると、付加成長だけでは骨の成長目標を達成できないことがすぐに分かる。新生児の大腿骨の骨幹の横断面は、成人の大腿骨の髄腔の中に完全に収まってしまう。では、どのようにして付加成長だけでこの完成型ができるのだろうか。
実際は、付加成長によって最終的な構造が形成されるが、完成型に達するためには強力な吸収現象が不可欠であり、その現象が実際に起こっていることが分かる。若い骨の内部および外面で、すでに形成された骨組織に、長期にわたって広範な破壊が正常な現象として見られ、これを吸収(Resorption)と呼ぶ。この現象が個々の骨に一定の様式で起こることは、Köllikerの広範な研究が示している。これにより新しい大きな分野が開かれ、その知識は個々の骨を十分に理解する上で不可欠である。
この知識により、完成した骨では当然古い吸収の跡が見られ、成長中の骨では進行中の吸収の徴候があることが分かる。吸収とそれに伴う構築の変更がいかに広範なものかを理解するために、3歳の子供の大腿骨は新生児の時の大腿骨の骨質をほとんど、あるいは全く持っていない(Kölliker)ということを挙げておこう。もっとも3歳以降も、吸収と付加現象は同様の強さで進行する。吸収が行われていることを示す徴候は、その場所で常に見られる2つの現象である。第1にハウシップ窩(Howshipsche Lakunen)と呼ばれる骨質の小さなくぼみ、次に破骨細胞(Osteoklasten)という、多少の差はあるが概して大きい多核性の細胞である(RK174(軟骨内骨発生)、175(破骨細胞) )。破骨細胞は巨大細胞(Riesenzellen)やMyeloplaques(骨髄小板の意)(Robin)とも呼ばれ、骨の吸収の問題において非常に注目に値する。実際、この細胞の存在する箇所では、すでに破壊の過程が始まっていると言える。この細胞は骨芽細胞とは全く反対の働きを持つ。Köllikerによれば骨芽細胞から、Schafferによれば血管内皮から、Häggquistによれば骨細胞に由来するとされている。
完成した骨では過去に行われた吸収の跡が、ハヴァース層板系にしばしば特に明確に認められる(RK172(ヒトの指骨の骨吸収像) )。つまり、完全に発達したハヴァース系の破片や遺残が存在し、ここで起こった現象の痕跡を残している。ハヴァース管の周囲で層板の一部が吸収され、新生され、また吸収され、さらに新生されるというプロセスが非常に頻繁に起こる。
[図172]ヒトの指骨の骨吸収像 横断 a*通常のハヴァース層板系。a, a 他の2つのハヴァース層板系。既にその内部で骨吸収が起こり(b, b)、ハヴァース腔が形成され、それが新しい層板で満たされている。c このような状態の箇所で再び吸収が起こり、それに伴って新たな骨質が沈着する。d 不規則な層板。e 通常の介在層板
[図173]軟骨内骨発生 7カ月ヒト胎児の上腕骨における骨化縁の一部。倍率40倍。
[図174]軟骨内骨発生 図173の骨化縁の一部をさらに強拡大したもの。120倍
[図175]破骨細胞 ヒトの歯槽壁(250倍)