基本構造
体幹の特徴
上肢と下肢の特徴
体表解剖学の意義
身体は体幹Stammと、それぞれ1対の上肢および下肢obere und untere Gliedmaßen(すなわち四肢)から構成される。
四肢の体幹に対する形態学的関係は、上肢も下肢も体の中心部をなす壁から左右対称的に伸びている。このため、四肢は体幹の一部のように見える。機能的には、四肢は主に知覚と運動を担う。一方、体幹は知覚と運動の一部を担うとともに、生命維持に必要なその他すべての機能を司る。
体幹の立体的基本形は、やや扁平な円柱、あるいは二等辺三角形の底面を持つ錐体と考えられる。体幹は3つの主要部、すなわち頭Caput, Kopf、頚Collum, Hals、胴Truncus, Rumpfに区別される。
胴はさらに3つの部分に分けられる:胸Thorax, Brust、腹Abdomen, Bauch、骨盤部Pelvis, Becken。
胴体の前面では、頚と胸Pectusの境界が鎖骨の位置によってある程度示される。鎖骨の外側部は肩甲骨と結合して上肢帯を形成し、上肢の自由部を支える。これにより胸の上部両側に肩峰という隆起が生じ、この部分で胴の幅が著しく広くなる。鎖骨のすぐ下には左右それぞれに鎖骨下窩Fossa infraclavicularisという窪みがある。また、胸の前面の顕著な特徴として、女性では乳頭Papilla mammae, Brustwarzeを持つ乳房Mammae, Brüsteがあり、男性では乳頭が痕跡的に小さく、その周りに乳頭と同様に褐色を呈する乳輪Areola mammae, Warzenhofがある。
胴の前面中央部で胸が腹Abdomenに移行する箇所に、心窩Herzgrube(またはMagengrube)と呼ばれる窪みがある。その両側で胸壁の下縁は、外から見える肋骨弓によって、より柔らかい腹壁と境界を形成している。肋骨弓は心窩から下外側、そして後方に走る。心窩から上方に向かって頚の根元まで正中の溝が延び、下方は恥丘Mons pubis, Schambergに向かって正中溝が達する。腹部正中線の溝の中1/3と下1/3の境界に臍Umbilicus, Nabelがある。臍は重要な部位で、円く隆起していたり、陥没していたり、あるいは円く隆起すると同時に窪んでいたりと、独特な形状を呈する。胎児期には、ここから臍帯Funiculus umbilicalis, Nabelstrangという胎児に属する索が伸びて胎盤に達し、この胎盤を介して母体との結合が実現される。出生後2、3日以内に臍帯は新生児から離脱し、その傷跡が瘢痕化して臍が形成される。臍の両側が側腹Latusであり、そこから背部に続いて腹の後面となる部分が腰Lumbusである。これと腹との移行部および骨盤部が強く隆起して寛骨部Coxae, Hüfteと呼ばれる。腹の下部と前面との境界をなす溝が鼠径溝Leistenfurcheであり、これは前上腸骨棘から恥丘の側方まで下降している。この溝のすぐ上が鼠径部Inguen, Regio inguinalisで、溝の下方には鼠径下窩Fossa subinguinalisがある。
腕を上方に挙げ、胴を側方から観察すると、その側面上部に腋窩Fossa axillaris, Achselgrubeという窪みがあり、これは前後から皮膚に覆われた筋肉の隆起によって縁取られている。
前方にある前腋窩ヒダPlica axillaris ventralisは大胸筋によって形成され、後方の後腋窩ヒダPlica axillaris dorsalisは広背筋と大円筋によって構成される。腋窩は外側が自由上肢により、内側は胸の外側壁によって境界される。
胴の後面、すなわち背Dorsumでは胸と腹との境界は不明瞭か、あるいは不確実にしか現れない。これに対し、頚は胴から肩の隆起によってはっきりと区別される。背部の対称的な左右両半は、正中線に沿って下方に向かって深さを増す溝、すなわち背溝Rückenfurcheによって互いに分けられる。この溝は寛骨部に達すると、まず幅の広い窪みである仙骨部Regio sacralisとなる。それから臀部の隆起の間で再び狭くなり、同時に深さを増す。ここを臀裂Crena ani, Gesäß- oder Afterspalteという。臀裂の奥に腸管の出口、すなわち肛門Anus, Afterがある。その周辺を含めて肛門部Regio analisという。肛門部の前方に尿生殖部Regio urogenitalisがあり、これは外陰部Regio pudendalisを含む。肛門の開口部から陰嚢の付け根あるいは腟口までが会陰Perineum, Dammであり、その周辺一帯が会陰部Regio perinealisと呼ばれる(RK152-153(**人体の諸部分:**会陰部))。
仙骨部Regio sacralis, Kreuzrauteは次の骨の部位によって境界される:第5腰椎の棘突起、仙骨の下端(左右の臀部が接する箇所)、上後腸骨棘に相当する皮膚上の左右1つずつの小さな窪み。男性ではこの窪みより上方で、腸骨稜Crista ilicaの高さに第2の小さな窪みが存在することがある。
[図149]人体の諸部分
Regiones corporis humani. 前面(His, Die anatomische Nomenclatur 1895の図に基づいて、Fr. Kopschが用語をJ. N. A. に合わせて改訂したもの)
[図150]人体の諸部分
Regiones corporis humani. 後面(His, Die anatomische Nomenclatur 1895の図に基づいて、Fr. Kopschが用語をJ. N. A. に合わせて改訂したもの)
[図151]人体の諸部分
頚と頭(His の『Die anatomische Nomenclatur 1895』の図を基に、Fr. Kopsch が用語を J.N.A. に合わせて改訂)
[図152]人体の諸部分
男性の会陰部(His著『Die anatomische Nomenclatur』1895年版より)
[図153]人体の諸部分
女性の会陰部(His著『Die anatomische Nomenclatur』1895年版より)