(図292(16歳の少女の外陰部)、図294(女性の外陰部) )
左右の小陰唇の間にある空間を腟前庭Vestibulum vaginaeという。前方は鋭角をなして始まり陰核亀頭に接し、後方で広がった後、後陰唇交連の前方で再び狭くなる。前庭には腟口と外尿道口が開口している。
外尿道口は壁がわずかに隆起しているのが特徴的である。一方、腟口はそれよりもかなり広い。
腟口Ostium vaginae, Scheidenmundは処女では円形で、後縁は通常鋭く陥凹している。前縁はしばしば後方にやや突出して見える(図292(16歳の少女の外陰部) )。前縁が強く突出している場合、腟口は半月形を呈する。陥凹した後縁は腟の入口に向かってひだ状に伸びている。このひだは腟を下方から不完全に境する壁であり、上方は腟の後壁に連続している。これを処女膜Hymen, Scheidenklappe, Jungfernhäutchenという(図292(16歳の少女の外陰部) )。
処女膜は通常半月形で、これを半月状処女膜Hymen semilunarisという。時に腟入口を輪状に取り巻き、中央に穴のある膜形状の輪状処女膜Hymen anularisもある。稀に複数の穴が開いたふるい状の篩状処女膜Hymen cribriformisや、腟入口を完全に閉じる薄い粘膜の無孔処女膜Hymen imperforatusも存在する。また、処女膜が低いひだ状や、完全に欠如することもある。性交などの外力で破れた処女膜は、瘢痕化して腟口縁に不規則な隆起を形成し、これを処女膜痕Carunculae hymenalesという。
腟口周囲には多数の粘液腺である小前庭腺Glandulae vestibulares minoresが輪状に分布している。小前庭腺は前方で外尿道口周囲の粘液腺と連続する。この腺は短い単一性の腺体を持つが、分枝した導管系も見られる。