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図287(卵管膨大部(横断))、288(子宮体の横断面)、289(子宮体粘膜)
卵管は卵巣と子宮をつなぐ導管です。左右の卵管は子宮とともに、前額面上にある大きな腹膜のひだ(子宮広ヒダPlica lata uteri)に包まれており、このヒダの上縁に位置しています。
卵管は長さ9~16cm、平均太さ0.5cmで、子宮内腔の卵管子宮口Ostium uterinum tubaeから始まります。子宮壁を貫く部分を間質部Pars interstitialisといいます。子宮の上外側縁から外に出ると、管は細く索状になり、これを峡部Isthmusと呼びます。そこから外側に向かって急激に太くなり、膨大部Ampullaを形成します(図284(子宮、卵管、卵巣、子宮広間膜、腟上部)、図290(腟、子宮、右卵管))。卵管は曲がりながら骨盤の側壁から後下方に向かい、卵巣に達します(図276(女性骨盤部の正中断面))。
卵巣近くで卵管はロート状に広がり、この部分を漏斗Infundibulumといいます(図284(子宮、卵管、卵巣、子宮広間膜、腟上部)、図290(腟、子宮、右卵管))。漏斗の縁には深い切れ込みがあり、多数の単純な突起や複雑な突起に分かれています。これらを采Fimbriaeといいます。突起の1つは特に長く、2つの唇に分かれ、腹膜のひだに包まれて卵巣に達しており、卵巣采Fimbria ovaricaと呼ばれます。采に囲まれた漏斗の奥には円形の狭い開口部があり、これを腹腔口Ostium abdominaleといいます。卵巣から放出された卵はこの口を通って卵管に入り、子宮へと移動します。
通常、卵はこの経路をたどりますが、時に腹腔に入ることがあります。受精した場合、腹腔内で発育することがあり(腹腔妊娠Graviditas abdominalis)、卵管内にとどまって発育することもあります(卵管妊娠Graviditas tubaria)。また、卵胞破裂後に受精卵が卵巣内にとどまり、卵巣妊娠Graviditas ovarialisとして発育を続けることもあります。
ヒトの場合、卵が卵巣から卵管と子宮を通って着床部に運ばれるのは、主に上皮の線毛運動によって行われる。これに加えて、卵管壁の筋の作用や血管の膨圧もある程度の役割を果たしているようだ。
時折、卵管の傍らに1つ以上の副卵管(Tubae accessoriae, Nebenöffnungen)という開口部が存在し、これも卵管と同様に采で囲まれている。副卵管は卵管に直接続いていることもあれば、卵管から分かれる特別な管に続いていることもある。
1つまたは2つ以上の采に、しばしば長い柄を持った円みを帯びた大小様々な小胞状のものがあり、これを胞状垂(Appendices vesiculosae, Hydatiden)と呼ぶ(図284(子宮、卵管、卵巣、子宮広間膜、腟上部))。同様の漿液で満たされたものが卵巣上体にも存在する。
層構造:卵管の壁は粘膜、筋層、漿膜の3層から構成されている(図287(卵管膨大部(横断))、288(子宮体の横断面)、289(子宮体粘膜))。
粘膜は多数の縦ひだを持ち、さらにそのひだは多くの細かいひだに分かれている。これを卵管ヒダ(Plicae tubae)(図282(膨大部毛の1本))といい、そのため卵管の横断像で内腔は星状を呈する。このひだは膨大部で著しく発達し、これを膨大部ヒダ(Plicae ampullares)という。対照的に、峡部の横断面では丈の低いわずかなひだしかなく、これを峡部ヒダ(Plicae isthmicae)という。粘膜は柔らかいがかなり厚く、次の要素から成り立っている:
筋層は2層から成る。すなわち、内側にあるよく発達した輪走筋層と、それに比べて弱い縦走筋層である。両層とも粘膜筋板と同じく平滑筋から成り、また平滑筋の間には血管が豊富に存在する。
漿膜は血管に富む厚い漿膜下組織によって筋層と境されている。
[図282]膨大部激髪の1つ 横断×90
[図283]卵管上皮、卵胞破裂の時期:月経開始から17日目。倍率720倍。