RK490(頚部、胸部、腹部の筋群:左側は浅層、右側はより深層を示す) RK492(腹筋) RK500(胸部および腹部の筋 側面図 I)

この筋は、第5~第12肋骨の外面から8つの筋肉質に富む尖頭をもって起始する。上部5つの起始尖頭は外側鋸筋の起始尖頭と、下部3つは広背筋の肋骨起始と、それぞれかみ合っている(RK500(胸部および腹部の筋 側面図 I) )。背方の線維は垂直に走り腸骨稜の外唇に達し、その前方の線維は徐々に斜走および横走の経路をとる。腹直筋の外側縁に平行して、その近くで筋肉質は腱膜へと移行する。

この腱膜は筋肉質と同じ方向に延びて進み、腹直筋および錐体筋の前で白線に達する。同時に、恥骨結合とその近くの恥骨前面にも到達する。

前腸骨棘と恥骨結節の間で腱膜は肥厚し、1つの腱条を形成する。これを鼡径靱帯(Lig. inguinale, Leistenband)という(RK491(鼡径靱帯と浅鼡径輪)RK492(腹筋) )。

鼡径靱帯の線維の一部は恥骨結節に達せず、(直立姿勢では)水平位をとる小さな三角形の腱板となって恥骨櫛の内側端と恥骨筋膜に付着する。これが裂孔靱帯(Lig. lacunare)である。その外側の自由縁は鋭くとがり、側方に向かって軽く凹んでいる(RK491(鼡径靱帯と浅鼡径輪) )。

恥骨の前面に付着する腱線維と恥骨結節に至る腱線維の間に1つの重要な間隙がある。これが浅鼡径輪(Anulus inguinalis subcutaneus, äußerer Leistenring)である。この輪の内側の境界は浅鼡径輪の内側脚(Crus mediale)、外側の境界は外側脚(Crus laterale)と呼ばれる。両脚の停止部の間にあって背方の境をなすのが反転鼡径靱帯(Lig. inguinale reflexum)で、これは溝状のへこみをもつ線維束である。浅鼡径輪の外側の角に円みをつける線維束は脚間線維(Fibrae intercrurales)と呼ばれる(RK491(鼡径靱帯と浅鼡径輪)RK492(腹筋)RK493(浅鼡径輪および大腿輪) )。

浅鼡径輪からは、男性では精索(Funiculus spermaticus, Samenstrang)が、女性では以前子宮広靱帯(Lig. teres uteri)と呼ばれた子宮鼡径索(Chorda uteroinguinalis, rundes Mutterband)が出ている。女性の浅鼡径輪の直径は男性よりも小さい。

**神経支配:**主に第5~第12肋間神経。時として第1腰神経もこの筋に分布する。

**脊髄節との関係:**Th. V~XII (L.1)

**作用:**骨盤が固定されているとき、両側の外腹斜筋が同時に働くと、脊柱を前方に曲げ、肋骨を下方に引く。片側の外腹斜筋が作用すると、同時に胸郭が反対側へ回転する。胸郭が固定されているときは骨盤が引き上げられる。腹圧については372頁を参照。

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[図491鼡径靱帯と浅鼡径輪、左側

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[図492] 腹筋

左側:腹直筋(鞘の前葉の大部分を除去)、外腹斜筋、錐体筋、浅鼡径輪を示す。

右側:内外腹斜筋と腹直筋を切断し、腹横筋と腹直筋鞘の後葉を表示。

変異:M. obliquus abdominis externus profundusの1例が報告されている(中山知雄、実田茂:解剖学雑誌、27巻、89~94、1952)。完全欠如はまだ確認されていないが、退化的になることはある。筋の重複はまれである。起始尖頭の数は7個のこともあれば9個に達することもある。最下の起始は腰背筋膜および第1腰椎の肋骨突起から起こる。上部の弓肋の前端から、存在が不定な深部の起始尖頭が出ることがある。

Le Doubleは第6肋骨の続きをなす箇所で、この筋に1つの腱画を観察し記載した。これは腹直筋の相当する腱画と直接関係している。

広背筋、外側鋸筋、外肋間筋との結合が見られることがある。

M. pectoralis quartus(第4胸筋)と呼ばれる筋との結合はまれである。