(RK505(横隔膜および寛骨内部の筋), RK562(寛骨部および大腿の筋:前面図), RK563(寛骨部および大腿の筋))
寛骨の腸骨窩から起始し、大腰筋と合流して大腿骨の小転子に固着する。腸腰筋は小転子に向かう途中で、筋裂孔Lacuna musculorum(筋膜の項参照)を通過する。
腸腰筋と股関節包の間には大きな粘液嚢があり、これを腸恥包Bursa iliopectinea(RK557(股関節周囲の筋停止と滑液包) , RK563(寛骨部および大腿の筋), RK565(右大腿の筋群(前内側からの図)) )と呼ぶ。成人の15%(Kessel, Morph. Jahrb. 1927)では股関節腔と連続している。また、この筋の停止腱と小転子の間にも腸骨腱下包Bursa ilica subtendineaという粘液嚢が存在する(RK557(股関節周囲の筋停止と滑液包) )。
**神経支配:**腰神経叢の枝および大腿神経
**脊髄節との関係:**大腰筋・小腰筋は(Th12), L1, L2, L3(L4)、腸骨筋はL2, L3, L4
**作用:**大腿骨を上方に挙上し、内転させ、かつ足尖を外側に回旋する。また、脊柱の腰部と骨盤を左右の股関節を結ぶ軸の周りに前下方に引く。
変異:大腰筋の起始は時に第12肋骨の小頭、腸腰靱帯、前仙腸靱帯にまで及ぶ。第5腰椎からの起始尖頭はしばしば欠如する。横隔膜との結合については既に横隔膜の項で述べた。独立した筋束であるM. psoas accessorius(副腰筋)が腰椎の肋骨突起から起始し、大腰筋の外側縁に接することがあるが、これは通常、大腿神経によって大腰筋と分離される。腸骨筋は時に腸腰靱帯、前仙腸靱帯、分界線、および仙骨から起始する。前腸骨棘から起始する筋束が独立することがあり、これをM. iliacus minor(小腸骨筋)という。大腰筋も腸骨筋も複数の筋束に分かれることがあるが、両筋が完全に2分することは稀である。小腰筋は全例の半数以上で欠如している(日本人における小腰筋の欠如率:男性212体側中106体側(50.0%)、女性94体側中51体側(54.3%)(小金井)、154体側中90体側(58.4%)(松島)、80体側中52.5%(五十嵐)(小金井良精、新井春次郎、敷波重次郎:東京医学会雑誌、17巻、127~131、1903;松島伯一:実地医家と臨床、4巻、749~750、1927;五十嵐信一、保志場守一:金沢医科大学解剖学教室業績、22巻、47~61、1936))。この筋が重複することもある。通常、腸骨筋膜に停止し、この筋膜を介して腸恥隆起に終わるが、大腿骨または小転子にも停止することがある。