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目次(VI. 感覚器)

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図605(右眼球の断面図)

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図625(ヒトの視神経の断面)

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図626(ヒトの視神経乳頭部の断面)

基本構造と経路

解剖学的特徴

神経線維の特性

視束(Augenstiel)は、以前は視神経(N. opticus、Sehnerv)と呼ばれていた。視神経交叉(Chiasma fasciculorum opticorum)から始まり、蝶形骨の視神経管(Canalis fasciculi optici)を通って眼窩に現れ、眼球に達する。眼窩内での視神経の走行は直線的ではなく、S字状に湾曲している。後半部は下外側に凸、前半部は外側に凹の弓状を描いている。

視神経は眼窩内で視神経鞘(Vagina fasciculi optici)という脳膜の延長に包まれている。具体的には、硬膜の鞘(Durascheide)である外鞘(Vagina externa)と、クモ膜と軟膜の鞘(Arachnoides-Piascheide)である内鞘(Vagina interna)、およびそれらの間のリンパ腔によって包まれている。外鞘と内鞘の間のリンパ腔は鞘間隙(Spatium intervaginale)と呼ばれ、クモ膜の薄い延長によって外方の狭い部分と内方の広い部分に分かれている。丈夫な小梁がクモ膜鞘を硬膜鞘に結びつけ、小梁の網がクモ膜鞘と軟膜鞘の間に張られている(図605(右眼球の断面図)図626(ヒトの視神経乳頭部の断面) )。

視神経の硬膜鞘は眼球壁へ移行し、強膜の外方2/3の層に続いている。軟膜鞘は大部分が強膜の内方1/3の層に移行する。その移行部で鞘間隙は通常、先細りになって終わる(図605(右眼球の断面図)図626(ヒトの視神経乳頭部の断面) )。

視神経の全周および全長にわたって、軟膜鞘の内面から多数の小梁が分かれて視神経内部に侵入し、これらが網状に結合して約800の小さい鞘を形成している。これらの鞘の中に視神経の神経線維束が収まっている。

視神経の前方部には2つの重要な血管がある。網膜中心動脈静脈(A. et V. centrales retinae)で、通常、眼球から15~20mm離れたところで、視神経の下内側1/4から、軟膜鞘の一部に覆われながら視神経内に侵入し、その中軸部に達する。この軟膜の被いは視神経の中心結合組織索(zentraler Bindegewebsstrang)を形成し(図625(ヒトの視神経の断面)図626(ヒトの視神経乳頭部の断面) )、前述の視神経の小梁とその網がこの中心索に続いている。視神経が強膜に入るところでは、これらの結合組織小梁は太くなって数を増し、大部分が横走するようになる。この部分を横断すると、穴の開いた結合組織板が篩のような印象を与える。これが強膜篩状野(Area cribriformis sclerae)で、強膜の縁から中心結合組織索まで伸びている。さらに、近くの脈絡膜からも繊細な小梁が視神経に入っている(図626(ヒトの視神経乳頭部の断面) )。

視神経の線維は強膜篩状野までは有髄で、平均直径は2µmである。より細い線維も多数混在しているが、5~10µmの太い線維も存在する。線維の総数は正確な決定が困難だが、約500,000本と推定される。視神経は中枢神経の一部であるため、シュワン鞘の代わりにグリア(Neuroglia)が存在する。篩状野で神経線維は髄鞘を失い、無髄の状態で眼球内に達する。そのため、視神経の太さは図605(右眼球の断面図)図626(ヒトの視神経乳頭部の断面) に見られるように、この部位で著しく細くなる。**変異:**時折、視神経線維の髄鞘がある程度眼球内へ伸びていることがある。**神経:**硬膜鞘には多数の神経線維があり、それらの神経線維束は互いに吻合して、所々に明確な網目を形成している。軟膜鞘にも神経線維が存在し、血管にはわずかに、結合組織には豊富に分布している。具体的には、血管には内頚動脈神経叢から、結合組織には動眼神経から神経が来ている(Ph. Stöhr, Anat. Anz., 55. Bd., 1922)。