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この領域は複雑な構造を持つ。まず、大きなリンパ嚢である腹膜嚢とそれに囲まれたリンパ腔が存在する。また、この部分で下肢のリンパ管が合流している。
さらに、骨盤の諸器官のリンパ管が2本の主要な束を形成し、一方で腸の乳ビ管とリンパ管は1本の中央束を作る。側方の束は骨盤壁と腹壁の深層からのリンパ管と合流する。胃と脾臓のリンパ管は中央束に向かって集まり、肝臓のリンパ管は腹腔と胸腔のリンパ管の中間に位置する。
a) 外腸骨リンパ叢(RK717(後腹壁,骨盤,鼡径部のリンパ節とリンパ管))は、鼠径リンパ節からの輸出管と、それに続く4~10個の腸骨リンパ節(Lymphonodi ilici)から構成される。鼠径リンパ節からの輸出管は外腸骨動静脈に沿って腹腔内に入り、そこで腹壁と骨盤壁の深層から来る少数のリンパ管と合流する。このリンパ叢は外腸骨動静脈の両側に位置し、ここのリンパ節から出る輸出管は下部の腰リンパ節に達する。
b) 直腸のリンパ管は数層からなるが、特に漿膜下層と粘膜下層のものがよく発達している。その一部は腸管壁を離れるとすぐに、腸壁のそばにある小さい肛門直腸リンパ節(Lymphonodi anorectales)に入る。続いて仙骨に接して存在する仙骨リンパ節(Lymphonodi sacrales)とつながる。この仙骨リンパ節はかなり数が多く、その一部は直腸間膜(Mesorectum)の両葉の間に位置する。肛門では浅層のリンパ管とつながりがある。
Gerotaによると、肛門の皮膚部分からのリンパ管は鼠径リンパ節に向かう。一方、肛門の粘膜にはリンパの経路が2種類あり、1つは常在性で、もう1つは不定である。常在性のものは肛門の筋層上にある特別なリンパ節(肛門直腸リンパ節)に注ぐ。不定のものは大坐骨孔の近くにある1つのリンパ節に注ぐ。肛門の粘膜からのリンパ路も同様に肛門直腸リンパ節に向かう。
c) 仙骨リンパ叢は仙骨リンパ節とそれをつなぐ小幹から構成される。このリンパ叢は尾動脈と中仙骨静脈の近くの左方に位置し、また仙骨の前面で直腸の両側にも存在する。
d) 膀胱のリンパ管は膀胱全体にわたって数層をなして広がり、内腸骨リンパ節と腸骨リンパ節(Lymphonodi ilici interni, Lymphonodi ilici)に入る。また前立腺および精嚢腺のリンパ管もこれとつながる。Bruhns(Arch. Anat. u. Phys. 1904)によると、前立腺と直腸のリンパ路の間には多数のつながりがある。
Gerota(Anatom. Az., 12. Bd., 1896)によると、粘膜のリンパ管と筋層のリンパ管を区別する必要がある。粘膜のリンパ管は細い小幹を形成して集まり、これらの小幹は筋層を貫く。その一部は他のものとつながることなく、一部は筋層のリンパ管とつながって骨盤側壁のリンパ節に向かう。筋層のリンパ管には前方のものと後方のものがある。これらは繊細な網を形成して始まり、合流して幹となる。この幹は膀胱の側壁に至り、そこから臍動脈に沿って走る。途中で隣接動脈に沿って存在するリンパ節(外側膀胱リンパ節、Lymphonodi vesicales laterales、Gerota)に入る。その他のリンパ節は恥骨結合の後ろで膀胱の前の脂肪組織内にある(前膀胱リンパ節、Lymphonodi vesicales ventrales)。
臍部のリンパ管には浅層と深層がある。浅層のものは皮下を走り、浅腹壁動脈の経路に沿って進み、浅鼠径リンパ節に注ぐ。深層のものは下腹壁動静脈とともに走り、その際に少数の小さいリンパ節(下腹壁リンパ節、Lymphonodi epigastrici caudales、Gerota)を通過し、深鼠径リンパ節または腸骨リンパ節に終わる。また、臍輪の近くで腹直筋鞘の後葉に覆われて存在する小さいリンパ節への注入も何度か成功している(臍リンパ節、Lymphonodus umbilicalis)。この部分のリンパ管は肝鎌状間膜内を臍静脈とともに走るリンパ管と連続している。
ヒトの膀胱の筋層は固有のリンパ管を持つが、粘膜はそれを持たない。しかし、尿道の粘膜には多数のリンパ路があり、これが膀胱に向かうにつれて次第に減少する。
e) 腟のリンパ管(RK721(女性の内部生殖器のリンパ管、腰リンパ節、および腸骨リンパ節))は、腟の下部からは浅鼠径リンパ節、さらに腸骨リンパ節に進み、また腟の上方2/3からは内腸骨リンパ節と腸骨リンパ節に至る。
f) 子宮のリンパ管(RK721(女性の内部生殖器のリンパ管、腰リンパ節、および腸骨リンパ節))は正常状態の子宮では細いが、妊娠中はその太さと広がりが著しく増す。その大部分は下方に進み、子宮と腟の太い血管の走行に沿って、腸骨リンパ節と腰リンパ節に入る。少数の細いリンパ管は子宮鼠径索内を通って、鼠径リンパ節に達する。
子宮底に属するリンパ管の一部は子宮広間膜内を外側に走り、卵管と卵巣のリンパ管につながり、卵巣動静脈に伴って骨盤から上方に出て腰リンパ節に入る。
g) 卵管のリンパ管(RK721(女性の内部生殖器のリンパ管、腰リンパ節、および腸骨リンパ節))は子宮体のリンパ管と吻合して卵巣の方に向かい、卵巣から出てくるリンパ管と合流して卵巣動静脈に沿って腰リンパ節に至る。