脳幹小脳静脈系(図57)
これは脳幹(中脳、橋、延髄)と小脳からの静脈血を集める静脈系の総称です(後藤,1986 a,1987)。
中脳の静脈系は、脳表面に集まり、主に迂回槽を走る脳底静脈に流れます。後有孔質から脚間窩へ出るものは、次に述べる橋静脈に合流します。
橋の内部から表面に集まる橋静脈は、互いに網状の吻合を形成し、三叉神経根の外側に集まり、錐体静脈(Dandyの静脈)となり、上錐体静脈洞に流れ込みます。
延髄の内部からの静脈は、前正中裂、前外側溝、後外側溝、オリーブ後溝等に集まり、脳表に現れます。延髄表面では網状の吻合を形成し、これを「延髄静脈」と呼びます。上方では橋静脈と、下方では脊髄表面の静脈とそれぞれ吻合します。
小脳の静脈は、小脳虫部からの静脈と小脳半球からの静脈とでは、その流れ方が異なります。小脳虫部では、小脳虫部上半からの静脈は上虫部静脈に流れ、大大脳静脈に合流します。一方、小脳虫部下半からの静脈は下虫部静脈に流れ、静脈洞交会に流れたり、後小脳半球静脈を介してこれらと合流します。小脳半球の静脈は、前方に集まる前小脳半球静脈と、後方に集まる後小脳半球静脈に分けられます。前者は錐体静脈に、後者は主に横静脈洞に流れます。小脳核からの静脈は、歯状核門に集まり、小脳半球と上小脳脚の間を通り、脳底静脈または大大脳静脈に流れます。
図57 脳幹小脳静脈系(後藤・神保, 1993a改変)
CS: 静脈洞交会、SPS: 上錐体静脈洞、ST: 横静脈洞、VHCA: 前小脳半球静脈、VHCP: 後小脳半球静脈、VMO: 延髄静脈、VPC: 中心前静脈、VPE: 錐体静脈(Dandyの静脈)、VPO: 橋静脈、VVI: 下虫部静脈、VVS: 上虫部静脈