a) 後頭部のリンパ管は皮下結合組織内を頭頂から乳様突起へ走行し、主に後頭動脈の枝に沿っている。これらは外後頭隆起付近の小さな後頭リンパ節(Lymphonodi occipitales)と、乳突部の耳介後方、胸鎖乳突筋付着部上の少数の耳介後リンパ節(Lymphonodi retroauriculares)を通過する。このリンパ管は項部浅層のリンパ管と連絡し、頚リンパ節に達する(RK726(頭部下部と頚部の主要リンパ管およびリンパ節))。
b) 側頭部のリンパ管は下顎後静脈に伴って耳介前方を下行し、その一部は耳下腺表面および腺内の耳下腺リンパ節(Lymphonodi parotidici)に入り、続いて下顎部と項部へ流入する(RK725(頭部、頚部、胸部のリンパ管))。
c) 顔面浅層のリンパ管は非常に豊富で、前額・鼻・上下眼瞼・頬・上下口唇・オトガイから起こり、斜走する顔面静脈に概ね随伴している(RK725(頭部、頚部、胸部のリンパ管)、RK727(眼瞼、鼻、口唇、耳のリンパ管とその領域リンパ節))。
これらは下顎部で顎下腺近傍の6~10個の顎下リンパ節(Lymphonodi submandibulares)に流入する。そのうち少数は頬筋外面の1個以上の頬リンパ節(Lymphonodi buccales)を経由することがある。顎舌骨筋下面の舌骨上方には複数のオトガイ下リンパ節(Lymphonodi submentales)があり、これらは下唇からの流れも受容する。
RK727(眼瞼、鼻、口唇、耳のリンパ管とその領域リンパ節)
d) 顔面深層のリンパ管は眼窩、鼻腔、翼口蓋窩、側頭下窩、咽頭、口蓋から起こる。
これらのリンパ管は下顎骨内側の深顔面リンパ節(Lymphonodi faciales profundi)に入り、そこから出たリンパ管は顎静脈とともに下顎角に達する。
上述の諸器官から少数のリンパ管が耳下腺内の耳下腺リンパ節(Lymphonodi parotidici)に至る。
主要器官別に列挙すると、顔面頭蓋に属する諸器官のリンパ路および所属リンパ節は以下の通りである。
眼瞼と結膜のリンパ管には内側と外側の流出路がある。内側は顎下リンパ節に至り、外側は耳下腺リンパ節に開口する。眼球と視神経のリンパ路については第2巻を参照されたい。
耳介と外耳道のリンパ管は前方は耳下腺リンパ節へ、後方は耳介後リンパ節へ、下方は近傍の耳下腺リンパ節の一部に至る。
鼓膜のリンパ管は外耳道のものとともに耳下腺リンパ節に至る(Most)。
耳管のリンパ管は中耳のリンパ管と連続している。これら2箇所の所属リンパ節は外側咽頭後リンパ節(Lymphonodus retropharyngicus lateralis)(Most)(RK728(咽頭と食道の粘膜のリンパ管)、729(喉頭のリンパ管))と深頚リンパ節である。