https://funatoya.com/funatoka/Rauber-Kopsch.html

目次(IV. 内臓学)

funalogo.gif


胃の表面を覆う腹膜は小弯において前胃間膜Mesogastrium ventraleに続き、その内部に肝臓がある。前胃間膜は前・右外側・左外側の肝間膜と小網から構成され、肝間膜はすべて横隔膜と前腹壁に至ることは既述の通りである。胃の大弯からは後胃間膜Mesogastrium dorsaleが伸びており、その中に脾臓が包まれている。したがって、横隔脾ヒダは後胃間膜の一部でもある。特殊な構造物としては大網と脾網がある。

  1. 小網Omentum minusは横隔胃部、肝胃部、肝十二指腸部から構成される。

    a) 横隔胃部Pars phrenicogastricaは食道の右側で横隔膜から胃の小弯に達する。

    b) 肝胃部Pars hepatogastricaは肝門と肝臓の静脈管索部から小弯に至る。2枚の膜からなり、後方の膜は網嚢の前葉である。肝胃部はこれらの部分の間に透明なベールのように張られ、それを通して尾状葉が透けて見える(図099(胸部と腹部の内臓の位置))。

    c) 肝十二指腸部Pars hepatoduodenalisは肝門と胆嚢から十二指腸の上部に達する。右方に向かう自由縁には網嚢孔という網嚢への入口がある。肝十二指腸部は総胆管Ductus choledochus(右)、肝動脈(左)、門脈(前2者の後方で中央部)を包含するため、かなり厚くなっている。この部分の両葉間にはリンパ管と神経も存在する(図113(腺腹)図164(腹部内臓の位置関係V))。

  2. 横隔脾ヒダPlicae phrenicolienalesは横隔膜から脾門に達する(図164(腹部内臓の位置関係V))。

  3. 後胃間膜Mesogastrium dorsaleは横隔胃部・胃脾部・胃結腸間膜部から構成される。

    a) 横隔胃部Pars phrenicogastricaは三角形の短いヒダで、横隔膜から胃の噴門の左側面に達する。

    b) 胃脾部Pars gastrolienalisは大弯の胃底部から出て脾門に達する。これは網嚢の前壁の左部分である。

    c) 胃結腸間膜部Pars gastromesocolicaは胃の大弯と横行結腸をつなぐ。

099.png

図099(胸部と腹部の内臓の位置)

113.png

図113(腺腹)

164.png

図164(腹部内臓の位置関係V)

大網Omentum majusは大弯と横行結腸から出ている。4枚の膜からなり、外側の2枚は大きな腹膜嚢に属し、内側(中間)の2枚は網嚢に属する。大網は時に脾までしか達しないこともあれば、小骨盤内まで達することもある。多量の漿膜下脂肪組織を含むことがある。大網は左方で胃脾部に移行する。大網の上部が胃の大弯と横行結腸の間にあり、横行結腸と癒着している部分が胃結腸間膜部である。

脾網Omentum lienale、MilznetzはBöker(Verh. anat. Ges., 1932)によると常に存在する網構造Netzbildungである。大網と同様に胃の大弯から出て、胃脾部の前方にあり、左方に向かう。3〜4本の指状の葉状部で脾を取り囲む形をしている。脾網は大型のネコ科(Felidae)動物で非常によく発達しており、時には大網よりも大きくなることがある(Schreiber)。