前陰唇交連の後方、大陰唇に囲まれた部位に、側方からやや扁平な低い突起がある。この突起は粘膜で覆われており、陰核の先端、すなわち陰核亀頭Glans clitoridisである(図293(陰核の海綿体:前方から見た図)図294(女性の外陰部))。

陰核Clitorisは、より大きな男性の陰茎に形状と性質が類似しているが、尿道は含まない。陰核は3~4 cmの長さの陰核海綿体Corpus cavernosum clitoridis, Schaft des Kitzlers(陰核体)から構成される。陰核体は左右それぞれ、恥骨枝の結合部から長い陰核脚Crus clitoridisとして起始する(図293(陰核の海綿体:前方から見た図))。左右の陰核脚は骨と平行に前方へ進み、合流して陰核体となる。その後、なだらかな鋭角を描いて後方へ曲がる。陰核体の正中面には不完全ながら隔壁があり、これを櫛状中隔Septum pectiniformeという。陰核体を覆う結合組織の被膜は陰核筋膜Fascia clitoridisと呼ばれる。恥骨結合から弾性に富む結合組織性の索が陰核の背面に至り、これを陰核提靱帯Lig. suspensorium clitoridisという。左右の陰核脚は坐骨海綿体筋(会陰の項を参照)に包まれている。

陰核の先端は粘膜で覆われ、丸みを帯びている。これが前述の陰核亀頭Glans clitoridisであり、極めて鋭敏な知覚を有する。

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[図292]16才の少女の外陰部(9/10)

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[図293]陰核の海綿体:前方から見た図(4/5)

陰核には2つの粘膜のひだがつながっている。これらは大陰唇の間にあり、小陰唇Labia minora pudendi, Nymphae, kleine Schamlippen と呼ばれる。小陰唇の形状は個人差が大きく、わずかな隆起から幅広いひだまでさまざまである。小陰唇は両側から腟前庭を囲み、外側は大陰唇と接しているが、その境界線はかなり直線的である。

左右の小陰唇は前方でそれぞれ2枚のひだに分かれる。側方のひだは、左右が陰核亀頭の上で弓状に合わさり、亀頭の上方と側方を包んで陰核包皮Praeputium clitoridisを形成する。一方、内方のひだは陰核小帯Frenulum clitoridisとなる。

小陰唇を構成する内外の皮膚層の間には脂肪がなく、多量の弾性線維と拡張した静脈を含む結合組織が存在する。この2層の皮膚には血管乳頭がよく発達しており、脂腺も存在するが、通常毛髪は見られない。

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[図294]女性の外陰部(9/10)

陰核亀頭の粘膜には血管乳頭と神経乳頭があり、その中に触覚小体と棍棒状小体が存在する。陰核の粘膜下組織には多数のファーター・パチニ小体(層板小体)が分布している。脂腺はごくわずかしかない。脱落した表皮細胞が脂腺の分泌物と混ざり合って、白みがかった陰核脂膏(スメグマ)を形成する。