私がラウベルの解剖学教科書を受け継いでその仕事を始めたのは50年も前のことである.この本が従来たどった運命については第18版の序言の中で述べておいた.第19版は上下の2冊だけにまとめて出されるが,ラウベルの時がすでにそうであったのである.第1巻には総論,組織学,骨学および関節学,筋学と脈管学がはいる.第II巻は内臓学,神経学,感覚器と皮膚を含むのである.
記載に当たっては形態の点に主眼をいてある.機能的なことは関節学と筋学においては相当な程度にまで記し,その他の領域では多少の考慮をした程度である.まず形態を十分に知るのでなければ,その機能を理解することはできない.私は機能的なことにも眼を閉じないで,しかも正確な形態学的な記載をするという立場を固くまもった.もしも機能的なことを充分に取り扱うとすると,そのさい形態学的な記載もあまり短くしないとすれば,本書の内容は著しく大きいものとなるであろう.
時代が進むにつれて本書の大きさがいっそう増すことは当然であるが,やはりそれには制限が必要である.この制限は挿図を本文の中に組み入れることにより,また短い発生学的な部分をさらに省略することによって成された.
挿図はすべて新たに複製されたものであり,一部は適当な大きさに直された.つまり本書の図は全部が新しいのである.私が手がけた従来のすべての版がそうであったように,今度も本文は全部目を通して,改善され,近縁の研究結果が加えられることによって完全にされたのである.それに加えて同僚たちおよび親切な研究者たちの協力が,この版の場合も極めて大きい役割をしている.将来の版にも同様なご協力をお願いいたしたい.
非常に有名な女医であるバイエルA. Beyerが私と平行して校正をみて下さった.この人は私が見落としていたたくさんの間違いを見つけてくれたのである.
1954年12月26日
Berlin-Dahlemにて,
Fr. Kopsch