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目次(III. 脈管系)

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静脈は大循環と小循環に分類される。肺静脈は、各肺から2本ずつ、計4本の短い幹として、肺の毛細血管系で動脈化した血液を左心房へ導く。一方、肺動脈は右心室から出て間もなく左右の主枝に分かれる大動脈で、静脈血を肺へ送る。

体静脈は全身の毛細血管系から始まる。その起始は細いが、次第に集まって大きな幹となり、成人では最終的に上下の大静脈という2つの主幹となって右心房に開口する。上大静脈(V. cava cranialis, obere Hohlader)は主に上半身の静脈血を、下大静脈(V. cava caudalis, untere Hohlader)は下半身の静脈血を集める。第3の小さな静脈幹である大心静脈(V. cordis magna)は心臓壁の血液を右心房へ導く。

静脈の数は動脈よりも著しく多い。これは、多くの比較的小さな動脈の周囲にそれぞれ2本の静脈、すなわち伴行静脈(Venae comitantes, Begleitvenen)が走行しているためである。ただし、比較的大きな動脈幹には1本の大きな伴行静脈が伴う。動脈に伴行する静脈の他に、動脈とは無関係に分布する多数の静脈があり、その一部は深部に、一部は体表近くの皮下に存在する(皮静脈 Venae cutaneae)。また、静脈系では動脈よりも吻合が遥かに多く見られ、この吻合により広範な静脈網(Retia venosa, Venennetze)と静脈叢(Plexus venosi, Venenplexus)が形成される。静脈の数がより多く、個々の静脈がより広いため、静脈系全体は動脈系に比べてより大きな空間を占める。両系の容量差を正確に定めるのは困難だが、静脈の容量は動脈の約2倍と推定される。

以上の記述から、静脈と動脈は肉眼的観察において、血流の方向、数と広さ、枝と主幹の全体的配置、さらにその内容物によって区別できる。動脈は酸素に富む鮮紅色の血液を、静脈は二酸化炭素の多い暗紅色の血液を運ぶ。ただし、これは大循環の血管に当てはまり、小循環では逆になる。また、この特徴は生後の個体に適用され、胎生期では脾動脈が二酸化炭素に富む血液を、臍静脈が酸素に富む血液を運ぶ。

さらに、壁の構造にも相違が見られる。静脈壁はより薄く、特に弾性成分と筋成分が比較的少なく、結合組織が目立つ。加えて、静脈は心臓との境界にのみ弁装置を有する動脈とは対照的に、非常に発達した弁装置を備えている。