RK268(眼窩と上顎洞の内側面、翼口蓋窩)RK273(頭蓋(45歳男性)前面観)

眼窩は不規則な4面体の錐体形くぼみで、底面は前方やや外側に向き、頂点は後内側にある。左右眼窩の軸を後方に延長すると内後頭隆起で交わる。

眼窩の内側壁(Paries nasalis)は正中面とほぼ平行。外側壁(Paries temporalis)は強く外方に開き、両側でほぼ直角をなし、後方延長線は下垂体窩付近で交わる。上壁(Paries superior)は前方で内外両側壁に弓状に移行。下壁(Paries inferior)は外前方へ傾斜し、徐々に上昇して内側壁に続く。

眼窩壁は7つの骨で構成される:1. 上顎骨(眼窩面と前頭突起)、2. 口蓋骨(眼窩突起)、3. 涙骨、4. 篩骨(眼窩板・紙様板)、5. 蝶形骨(小翼と大翼)、6. 前頭骨(眼窩面)、7. 頬骨(眼窩面)。これらの骨間の縫合は以下の通り。内側:蝶篩縫合(Sutura sphenoethmoidea)、涙篩縫合(S. lacrimoethmoidea)、涙上顎縫合(S. lacrimomaxillaris)、篩上顎縫合(S. ethmoldeomaxillaris)、前頭篩骨縫合(S. frontoethmoidea)、前頭涙骨縫合(S. frontolacrimalis)、前頭上顎縫合(S. frontomaxillaris)。外側壁:蝶頬縫合(S. sphenozygomatica)、頬前頭縫合(S. zygomaticofrontalis)、蝶前頭縫合(S. sphenofrontalis)。上壁:篩前頭縫合(S. sphenofrontalis)。下壁:眼窩下縫合(S. infraorbitalis)、頬上顎縫合(S. zygomaticomaxillaris)。

眼窩と隣接する空間のつながりは以下の通りである:視神経管・上眼窩裂・眼窩頭蓋管は頭蓋腔に、眼窩篩骨管および鼻涙管は鼻腔に、下眼窩裂は翼口蓋窩に通じている。また、側頭窩とは下眼窩裂と頬骨管によって、顔面とは眼窩口・頬骨顔面管・外側前頭孔・眼窩下管によって結合している。

視神経管Canalis fasciculi opticiについて注意すべき点は、この管が眼窩の四角錐の頂点で内側寄りにあるため、頭蓋を正面から見ただけでは視神経管を認識できないことである。視神経管のやや下方には棍棒状の上眼窩裂Fissura orbitalis cerebralisが始まる。上眼窩裂は眼窩の外側壁と下壁の後端で、長く伸びた下眼窩裂Fissura orbitalis sphenomaxillarisの始まりの部分とつながっている。下眼窩裂は上顎骨と蝶形骨の大翼の間を前外側方へ伸び、頬骨に達する。上顎体の後方では口蓋骨の眼窩突起が下眼窩裂の内側縁の一部を形成している。

上眼窩裂の外側端の前には、しばしば硬膜眼窩孔Foramen meningeoorbitaleという小さな孔が開いている。これは頭蓋腔に通じ、中硬膜動脈の1枝を涙腺動脈へ導く。

内側壁の前部には涙嚢窩Fossa sacci lacrimalisがあり、下方へ骨性の鼻涙管Canalis nasolacrimalisへ通じている。鼻涙管の下端は下鼻道の始まりの部分に開口する。

眼窩の形と位置に軽度の非対称が見られるのは一般的な現象である。眼を失うと眼窩が縮小するのは、歯を失うとその歯槽がなくなるのと同様のメカニズムである。

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[図268] 眼窩と上顎洞の内側面、翼口蓋窩(4/5倍)

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[図269]鼻腔(右)の外側壁(4/5倍)

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[図270] **鼻腔(右)の外側壁:**中鼻甲介および下鼻甲介の大部分を除去(4/5倍)