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(図660(両側の眼窩内の諸筋を上方からみる)、図661(左眼窩内の諸筋を左側面から見る)、図662(左眼窩の眼瞼板、上眼瞼挙筋腱、上下斜筋を前方から剖出した図)、図664(眼球被膜(テノン被膜)))
視神経と眼球の周囲に4つの直筋が配置されており、上・下・内側・外側にそれぞれ1つずつ走行している。これらは上直筋、下直筋、内側直筋、外側直筋(M. rectus bulbi superior, inferior, nasalis, temporalis)と呼ばれる。これらの直筋は眼窩の尖端から視神経の周囲を取り巻いて前方へ走り、赤道より前方で眼球に付着する。その長さは約4cmである。
最も重量があるのは通常、内側直筋(0.7479g)だが、外側直筋がより重い場合もある。上直筋は最も細いが、最も長い。4つの直筋はその走行によって円錐を形成し、その底部は眼球に、尖端は眼窩の尖端に位置する。これらの直筋は眼筋円錐(Augenmuskelkegel)の主要構成要素となる。ただし、眼筋円錐は上眼瞼挙筋と上斜筋の加入によってはじめて完全な形態となる。
4つの直筋は眼窩の尖端で、視神経管の周囲や上眼窩裂の隣接部分から短い腱によって起始する。上直筋、内側直筋、上眼瞼挙筋、上斜筋は上眼窩裂の上面から起始するが、上直筋と上眼瞼挙筋は同時に視神経管の上面からも起始する。内側直筋と上斜筋は視神経管の内側から起始し、これら2筋の起始腱は視神経の硬膜鞘にも付着している。各直筋の起始部は視神経を輪状に取り囲んでいるが、視神経自体は中心からずれて上内側に偏在している。各直筋の腱にとって共通の起始をなすこの結合組織塊は総腱輪(Anulus tendineus communis)と呼ばれる。外側直筋は通常2脚に分かれた腱で始まり、大きい方の下脚は総腱輪から、小さい方の上脚は蝶形骨小翼の基部の下面から起始する。両脚の間には1つの孔があり、第3・第6脳神経および第5脳神経の鼻毛様体神経がここを通って末梢へと走行する(図661(左眼窩内の諸筋を左側面から見る))。
これらの直筋は上述の起始部から前方へ進み、眼球の赤道より前方にある付着帯(Insertionszone)に到達する。筋実質部から停止腱への移行は付着部から4〜8mm離れた位置にある。腱線維は強膜の線維束と密に交織し、強膜の内部にまで進入している。付着部は角膜縁から7〜8mm離れている。内側直筋が最も幅広く、内側直筋と上直筋の腱の間隔が最も広い。上直筋の腱と外側直筋の腱が最も近接している。強膜は腱と線維が交織する部位に、顕著な前方肥厚部を有している。
各眼筋を包む結合組織性の鞘は、既述の眼球被膜(Capsula bulbi)という結合組織層と連続している。また、眼筋の鞘は眼窩骨膜および結膜円蓋とも結合し、そのうち2つの鞘は筋膜尖(Fascienzipfel)と呼ばれる線維索によって眼窩壁とも結合している(図662(左眼窩の眼瞼板、上眼瞼挙筋腱、上下斜筋を前方から剖出した図) )。頬骨前頭縫合部と滑車の下方に、それぞれ外側および内側の筋膜尖が付着している。これら2つの筋膜尖の結合により、眼球の位置が安定し、過度の運動が抑制される。また、結膜円蓋に至る筋膜尖は、関節包を緊張させる筋と同様に機能し、結膜の挟み込みを防いでいる。上直筋は上眼瞼挙筋とも結合組織性の連絡を持つため、上方視の際に眼瞼挙上を補助する。下直筋の鞘からは顕著な線維束が下眼瞼へ走行している。
この線維束のうち眼瞼板に至る部分には平滑筋が織り込まれている。平滑筋性の瞼板筋M. tarseusとはこの筋板を指す。一方、上眼瞼の瞼板筋は上眼瞼挙筋の終末腱に伴って走行している。
[図660] 両側の眼窩内の諸筋を上方からみる(9/10)
左側では上眼瞼挙筋の大部分を切除してある。
[図661] 左眼窩内の諸筋を左側面から見る(9/10)