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RK523(**右上腕および右肩甲骨の筋:**側面図)

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RK529(上腕および肩甲骨の筋:尺側面図)

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RK535(**右前腕の筋:**掌側面図)

この筋は横断面が円みを帯びた紡錘状の筋で、2つの頭部からなる。長頭(Caput longum)は肩甲骨の関節上結節から、また二叉状に関節唇から起始し(RK410(肩関節) )、上腕骨頭の上で肩関節の関節包を貫き、結節間溝を通過する。ここでは結節間滑液鞘(Vagina synovialis intertubercularis)に包まれ(RK409(右肩関節:前額断面の後方からの図) )、その後筋腹へと移行する。

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RK410(肩関節)

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RK409(右肩関節:前額断面の後方からの図)

短頭(Caput breve)は烏口腕筋とともに肩甲骨の烏口突起から起始し、直ちに短頭自身の筋腹へと移行する。長短両頭の筋腹は互いに合して、強力な終腱(主腱 Hauptsehne)となり、橈骨結節に停止する。

肘より近位で、この停止腱から浅層の腱膜が分岐する(副腱 Nebensehne)。これは内側に伸びて前腕筋膜に加わり、二頭筋腱膜(Lacertus fibrosus)と呼ばれる(RK529(上腕および肩甲骨の筋:尺側面図)RK535(**右前腕の筋:**掌側面図) )。

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RK529(上腕および肩甲骨の筋:尺側面図)

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RK535(**右前腕の筋:**掌側面図)

橈骨結節と上腕二頭筋腱との間には二頭筋橈骨嚢(Bursa bicipitoradialis)という粘液嚢が存在する。

**神経支配:**筋皮神経による。

**脊髄節との関係:**C. V, VI.

**作用:**長頭は上腕を外転し(R. Fick)、短頭は上腕を内転する。また、この筋が全体として働くときは前腕を屈曲し、かつ回外する。

変異:(日本人における上腕二頭筋の過剰筋頭の出現頻度は、体側数では古泉100側のうち26側(26%)、足立887側のうち163側(18.4%)、佐野(アイヌ)10側のうち4側(40%)、白木は128側のうち28側(21.8%)、中国人では中野81側のうち7側(8.6%)、個体数では古泉50体のうち19体(38%)、足立269体のうち68体(25.3%)、佐野(アイヌ)5体のうち2体(40%)、中国人では中野38体のうち7体(18.4%)である(古泉光一:日本医科大学雑誌、5巻、1063~1083、1934;白木豊:愛知医学会雑誌、41巻、287~290、1934)。)この筋の全部、もしくは短頭または長頭が欠如することがある。両頭が程度の差はあるがかなりの範囲で独立することがある。両頭がそれぞれ重複していることもある。短頭の起始が烏口肩峰靱帯の上に延び、また長頭が結節間溝内で、大・小両結節、肩関節の関節包、大胸筋の腱から起始することがある。筋頭の数が通常より多くなることがしばしばある。第3の頭と呼べるものが肩甲骨、上腕骨および上肢帯の軟部組織の様々な部位から起始することがある。

4頭、さらに5頭あるものが幾度か報告されている。二頭筋腱膜と筋腹との関係は個体差が著しいが、これについてはLandauおよびScheuchzer, Mitt. naturforsch. Ges. Bern, 1923を参照されたい。