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盲腸は6〜8cmの長さと、ほぼ同じ幅を持つ大腸の一部で、回腸の開口部より下方に位置する。(日本人の盲腸の平均長は男性5.61cm、女性4.83cm。久保武:日本人の消化管調査。東京医学会雑誌20巻269〜305、1906。)盲腸は大腸が嚢状に膨らんだ部分であり、大腸の中で最も広がった箇所である。
盲腸の末端、回腸開口部の近くから虫垂(虫様突起)という細長い円柱状の突起が外に出ている(図159(腹部内臓の位置関係 III. 腹腔後壁の左半を観察する)、図160(腹部内臓の位置関係IV. 腹腔後壁の観察)、図161(大腸、適度に充満:レントゲン像)、図162(盲腸と虫垂、回腸末端部およびその周囲の腹膜嚢)、図163(盲腸と虫垂、および回腸末端部:アルコールで固定した標本))。この虫垂は腸壁のすべての層を備えている。
図159(腹部内臓の位置関係 III. 腹腔後壁の左半を観察する)
図163(盲腸と虫垂、および回腸末端部:アルコールで固定した標本)
虫垂の長さは2〜20cm、あるいはそれ以上で、太さは0.5〜1cmである。多くの場合、軽くらせん状に曲がり、右の腸骨窩から小骨盤の縁に向かって伸びており、時に小骨盤内に達することもある。
この付属器官は先端まで中空で、その腔は小さな開口部を通じて盲腸に開いている。この開口部は時として小さな半月形の粘膜ひだである虫垂弁(Valvula processus vermiformis)で囲まれている(図163(盲腸と虫垂、および回腸末端部:アルコールで固定した標本))。虫垂の末端が少し太くなっていることもまれではない。
回腸の終端部は小骨盤から上後方かつ右方へ進み、盲腸と結腸の境界で大腸に達する。回腸から大腸への開口部には、上唇(Labium craniale)と下唇(Labium caudale)からなる結腸弁(Valvula coli)が備わっている。この弁は腸内容物の小腸から大腸への通過を許すが、逆流を防ぐ働きをする(図163(盲腸と虫垂、および回腸末端部:アルコールで固定した標本))。
上下の唇は回盲結腸口(Ostium iliocaecocolicumほぼ横走する細長い開口部に向かって集中している。この回盲結腸口の両端で上下の唇が合わさり、それぞれ横走するひだとなって大腸粘膜の内面に続いている。この部分は結腸弁小帯(Frenula valvulae coli)と呼ばれる。
結腸弁の回腸側の面は小腸粘膜で覆われ、大腸側の面は大腸粘膜で覆われている。大腸壁が引っ張られると、2つの小帯が緊張し、弁の自由縁が接することで大腸内容物の逆流を防ぐ。
盲腸と虫垂は発生初期には1つの長い単一の構造だった。新生児でも両者の差異は顕著ではなく、盲腸が徐々に細くなって虫垂に移行する。この関係が成人にも残ることがあり、その場合、虫垂のかなり大きな部分が2〜3cmの太さを持つ。まれに虫垂が完全に欠如することもある。
RibbertとZuckerkandlによると、虫垂は退化する傾向が強い。Ribbertは25%で部分的な退化、3.5%で完全な退化を観察し、Zuckerkandl(Anat. Hefte, 4. Bd.)は23.7%で部分的退化、13.8%で完全な退化を報告している。
**変異:**盲腸が外見上あるいは実際に通常より長くなることはまれではない。Vogt(Verh. anat. Ges., 1921)によると、移動盲腸(Caecum mobile)は高齢者にはほぼ必発の現象で、加齢に伴う全内臓の下降の結果として生じる。
盲腸が通常より高位にあること(Hochstand des Caecums)はしばしば見られる。その程度が著しい場合、上行結腸が完全に欠如しているように見えることもある。妊娠時には、拡大した子宮により盲腸、虫垂、および上行結腸がしばしば上方に変位する。
**比較解剖:**盲腸は哺乳類に広く見られるが、種によって大きな変動を示す。非常に小さいものや完全に欠如しているものもある。草食動物では、全身長よりも長い盲腸を持つものもある。
局所解剖:盲腸の位置 盲腸は右腸骨窩の腸骨筋膜上にあり、その前面は鼠径靱帯の中央部上方で前腹壁に接している。盲腸の後腹壁への固着範囲は様々で、腹膜の状態により異なる。回腸が盲腸に開口する部位はモンロー線(Monrosche Linie:前腸骨棘と臍を結ぶ線)の中点に当たり、この点をマックバーニー点(Mc. Burneyscher Punkt)という。ランツ点(Lanzscher Punkt)は左右の前腸骨棘を結ぶ線の右1/3の点を指し、虫垂が盲腸に開口する部位に相当する。
盲腸の位置異常についてはThorsch(Z. Anat. u. Entw., 61. Bd., 1921)が記載している。盲腸が左方に偏位し、正中線に達するかそれを越えることもあり、同時にやや下方に位置することもある(これらを合わせておよそ18%)。盲腸が上方かつ右方に位置を変えていることは約12%に見られる。
虫垂の位置 最も多い第1の位置は右の分界線を越えて小骨盤に達し、腸骨動静脈と交差する。この際、男性では右尿管と精巣動静脈に、女性では卵巣と卵管に近接する。第2の位置は回腸と盲腸のなす角にある。第3の位置は回腸末端部に接している。第4の位置は盲腸と上行結腸の後面に接している。
[図162]盲腸と虫垂、回腸末端部およびその周囲の腹膜嚢(3/4)
[図163]盲腸と虫垂、および回腸末端部:アルコールで固定した標本(3/4)
盲腸の前壁は大部分を除去してある。
[図164]腹部内臓の位置関係V.
腹腔の後壁,とくに網嚢の後壁をみる.消化器系のうちで肝臓・胃・小腸・大腸をとり除いて,ただ十二指腸と膵臓ならびに直腸が自然の位置に残してある. ✠右側の結腸くぼみ(十二指腸凹所),*左がおの結腸くぼみ(膵凹所)[Waldeyer]