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[図715]蝸牛の血管 右の蝸牛の底回転と中回転を放線方向に切断した図(模型図,F. Siebenmann)
2:ラセン動脈路とそのアーチ,3:上隔壁動脈,5:ラセン板の放線状動脈,6:外方のラセン血管,9:ラセン板静脈とアーチ.
[図716]迷路動脈の分枝の模型図 蝸牛と蝸牛神経の巻きを解いた図(F. Siebenmann)
2 総蝸牛動脈、3 固有蝸牛動脈
迷路の動脈は次のものから来ている:
1.脳底動脈A. basialisから迷路動脈A. labyrinthiが出て迷路に至る。迷路動脈は内耳神経に沿って進み、前庭枝と蝸牛枝に分かれる。前庭枝Rami vestibularesは2つの前庭嚢および3つの半規管に枝を送る。平衡斑と膨大部稜では密な血管網をなすが、その他の前庭と半規管の領域では粗い網をなしている。蝸牛枝Ramus cochleaeは蝸牛に入るところで多数の枝に分かれる。これらの枝の一部は直ちに第1回転に分布するが、他の部は蝸牛軸の中を通って進む。蝸牛軸から出ていく枝はこの軸の実質の中で大小の糸球状の集まりをなしている。小さい糸球は骨ラセン板の起始部のやや上方にあって前庭唇に分布し、ライスネル膜の毛細管(それが存在する限りで)へも血液を与えている。これに対して大きい糸球は回転の隔壁の基部にあって、2つの互いに離れた血管領域に血液を与えている。すなわち直下にある回転の血管条Stria vascularisと膜ラセン板である。
2.後耳介動脈A. retroauricularisからの枝。この動脈からは茎乳突動脈A. stylomastoideaが起こり、これがa)蝸牛窓を通して蝸牛へ1枝を送り、またb)アブミ骨枝R. stapediusというさらに細い1枝をアブミ骨と岬角に送っている。このアブミ骨枝は顔面神経管の全長のほぼ中央で茎乳突動脈から分かれ、アブミ骨閉鎖膜を貫いて岬角に達し、ここで前鼓室動脈A. tympanica anteriorの小枝と結合して、アブミ骨ならびにアブミ骨閉鎖膜に血液を与える。
蝸牛の静脈は隆起血管Vas prominensと蝸牛軸ラセン静脈V. spiralis modioliに集まる。
上に述べたことからわかるように、前庭階は動脈によって、鼓室階は静脈によって巡らされている。したがって鼓室階の上方に接する膜ラセン板は、動脈の脈動から完全に隔絶しているわけである。
残りの静脈は前庭静脈Vv. vestibularesであって、これは迷路静脈Vv. labyrinthiに注ぎ、迷路静脈は下錐体静脈洞または横静脈洞に開く。蝸牛小管の中を蝸牛小管静脈V. canaliculi cochleaeが通っており、これは蝸牛の第1回転からの血液を頚静脈上球に導く。また前庭小管の内口からは前庭小管静脈Vv. canaliculi vestibuliという極めて細い静脈が入り込んで下錐体静脈洞に達する。
迷路とくに蝸牛における脈管と血流についてはJ. Eichler(Anatomische Untersuchungen Über die Wege des Blutstromes im menschlichen Ohrlabyrinth, Leipzig 1902)およびF. Siebenmann(Die Blutgefäße im Labyrinth des menschlichen Ohres,11図葉つき, Wiesbaden 1894)を参照せよ。