https://funatoya.com/funatoka/Rauber-Kopsch.html
基本構造と形態
主要な解剖学的構造
特徴的な形態と変異
構成要素
図668(ダーウィンの耳介結節が発達し、前方に強く巻きこんでいる例)、669(ダーウィンの耳介尖と耳輪下行部が巻きこんでいない例)
形:耳介は耳介軟骨Cartilago auriculaeという、かなりの広さをもつ軟骨板で支えられた皮膚のひだである。貝殻または中空の円錐のような形状で、外耳道の入口を塁壁のように囲んでいるが、その前縁にのみ切れこみがある。
耳介の外面(後面)は全体として凸、内面(前面)は凹であり、両面ともに特徴的な高まりやくぼみが複数存在する。耳介の長さは5~7cm、幅は3~3.5cmである。(日本人での計測値もこの範囲に含まれる。ただしアイヌではヨーロッパ人や日本人よりかなり耳が長い(相貌学でいう耳長が大きい)。また耳介は成人後も成長を続けることが興味深い。宮嶋巍、日耳鼻42(1936)、山本三男、金沢解剖業績42(1952)、増川允通、谷口編:人類学人類遺伝学体質学論文集25(1956)など。)頭に対する付き方も個体によって様々であり、頭からの離れ具合や長軸の方向が異なる。
耳介の縁はその全長の大部分が凹んだ内面の方へ巻きこんでいる。これにより耳介の上部3/4を取り囲む隆起が生じ、これを耳輪Helixという。耳輪が外耳孔の上で始まる部分は耳輪脚Crus helicisと呼ばれる。耳輪の内側には対輪Anthelixというもう1つの高まりがある。これは外耳孔の上方で対輪脚Crura anthelicisという2脚をもって始まり、両脚は短い距離を走った後に合わさって対輪を形成する。耳介の前縁には外耳孔を前から不完全に覆って後方へ伸びる突起がある。これが耳珠Tragusである。その後ろには下方の珠間切痕Incisura intertragicaという深い切れ込みによって耳珠から隔てられた1つの突起が、下後方から前上方へ伸びている。これが対珠Antitragusであり、対輪が上方から伸びてきてこれに続く。耳介をなす皮膚のひだは対珠と珠間切痕より下方では軟骨の支柱をもたず、脂肪組織を含むのみである。外耳のこの部分を耳垂Lobulus auriculaeという。耳垂はその基部の後部だけが軟骨の支柱をもち、それは耳介軟骨の細い1突起である耳輪尾Cauda helicisがここに含まれるためである。
耳輪と対輪の間には耳介縁に平行して湾曲して走る1本の溝があり、舟状窩Scaphaと呼ばれる。この溝は上前方で両対輪脚の間のさらに広い溝に続いている。この溝を三角窩Fossa triangularisという。対輪と耳珠に囲まれて、耳甲介Concha auriculaeという耳介で最大のくぼみが広がっている。このくぼみは耳輪脚によって小さい上部と大きい下部に分けられる。上部は耳甲介艇Cymba conchae、下部は耳甲介腔Cavum conchaeと呼ばれる。また顔の外側面から耳輪と耳珠の間を通って耳甲介腔に至る溝は輪珠溝Sulcus helicotragicusと呼ばれる。頭の方に向かっている耳介の外面(後面)では、内面(前面)でのくぼみが高まりとして現れている。したがってここでは舟状窩隆起Eminentia scaphae、三角窩隆起Eminentia fossae triangularis、甲介隆起Eminentia conchaeが区別される。これに対して対輪には対輪窩Fossa anthelicisが対応し、これもまた2脚に分かれている。そのうちの下方の脚は横対輪溝Sulcus anthelicis transversusと呼ばれる。
耳輪の自由縁はやや巻きこんで、その端が薄くなっている。そしてここに突出や切れ目が見られることが珍しくない。特に興味深いのは[ダーウィンの]耳介結節Tuberculum auriculae[Darwini]と呼ばれる突出であり、これは耳輪の下行部の上部に見出される。とがった耳をもつ哺乳動物では、まさにその耳の先端のところにこの耳介結節が当たる。ヒトの耳でも耳輪の形成が不完全な場合には、ダーウィン結節が後方へ突出していることがある。
これを**(ダーウィンの)耳介尖Apex auriculae[Darwini]という。このような諸例は"ダーウィンの尖り耳Darwinsches Spitzohr"として知られており、上述の理由から祖先がえり**atavistische Bildungと考えられている(図668(ダーウィンの耳介結節が発達し、前方に強く巻きこんでいる例)、669(ダーウィンの耳介尖と耳輪下行部が巻きこんでいない例))。
耳珠は2つの結節から構成されることがしばしばある。この場合、下方の大きい結節が狭義の耳珠であり、上方の小さい方は珠上結節Tuberculum supratragicumと呼ばれる。
**変異:**耳輪は後部あるいは上部まで巻きこんでいないことがある(つまり耳輪が完全または不完全にその巻きを戻した型である)。耳輪脚は対輪と合流することがある一方、2つか3つの枝に分かれることもある。対輪は非常に小さいことがあり、完全に欠如することもある。後方の対輪脚は欠如または重複することがある。耳珠と対珠は矮小化や欠如がみられる。耳垂は極めて小さいものから大きいものまであり、その前縁は顔面から遊離しているものや、固着(sessil—固着した、不動の)しているものがある。また1本の溝によって耳垂が前後に二分されることがある(日本人のダーウィンの結節と耳垂の形態については、豊田文一ほかの文献がある。日耳鼻46巻11号、1940)。
耳介の構成部分は皮膚・耳介軟骨・耳介靱帯・耳介に固有の小筋群である。
[図666]左側聴覚器の概観図(4/3倍)
[図667]左耳介の外側(前)面(×1倍)
[図668]ダーウィンの耳介結節が発達し、前方に強く巻きこんでいる例
[図669]ダーウィンの耳介尖と耳輪下行部が巻きこんでいない例