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眼瞼の基本構造
結膜の構造と機能
人種的特徴
眼瞼(まぶた)Palpebrae, Augenliderは顔面の軟部組織がつくる小さなひだである。上眼瞼(うわまぶた)と下眼瞼(したまぶた)Palpebra superior et inferior, oberes und unteres Lidがあり、いずれも眼球の前方に位置し、上下に動くことで眼瞼裂を開閉する(図650(左眼瞼裂(閉眼時))、図651(左眼瞼裂(開眼時))、図652(ヒトの眼瞼と眼球前方部の正中矢状断面) )。
眼瞼の前面は凸で眼瞼皮膚面Facies cutanea palpebraeと呼ばれ、後面は凹で眼瞼結膜面Facies conjunctivalis palpebraeという。眼瞼には自由縁と付着縁がある。上下の自由縁が内外両側で合するところを内側および外側眼瞼交連Commissurae palpebrarum nasalis, temporalisと呼ぶ。眼瞼の自由縁は眼瞼縁Margo palpebralisといい、幅約2mmで、前稜と後稜がある。これを前および後眼瞼縁Limbus palpebralis cutaneus, conjunctivalisというが、両者とも鋭く形成されているのは上眼瞼のみである(図652(ヒトの眼瞼と眼球前方部の正中矢状断面) )。眼瞼縁では外面の皮膚が折れ返り、粘膜の性質をもつ内面の層へと続く。この粘膜は眼瞼の後面を眼窩縁の近くまで被い、その後急に方向を変えて眼球の表面に広がる。具体的には、眼球角膜縁から上下に8~9mm、左右に約10mm離れたところで眼球の表面に達し、そこから強膜の前面を角膜縁まで被う。それより先は角膜の表層へ移行し、ここでは異なる形態を示す。この粘膜は眼瞼と眼球とを結びつけているため、結膜Tunica conjunctiva Bindehautと呼ばれる。結膜のうち眼瞼の後面を構成する部分を眼瞼結膜Tunica conjunctiva palpebrae、眼球を被う部分を眼球結膜Tunica conjunctiva bulbiと呼ぶ。眼瞼結膜から眼球結膜へ折れ返るところは結膜円蓋Bindehautgewölbeで、これには上および下結膜円蓋Fornix conjunctivae superior et inferiorがある。また結膜全体によって形成される「粘膜のポケット」を結膜嚢Saccus conjunctivae, Konjunktivalsackと呼ぶ。結膜嚢の内部、内眼角付近に、外側へ凹を向けて斜めに走る粘膜の小さなひだが見られる。これが結膜半月ヒダPlica semilunaris conjunctivaeで、わずかに第三眼瞼drittes Augenlidと呼ぶべきものを形成している。多くの動物では第三眼瞼がよく発達して可動性を持ち、瞬膜Membrana nictitans, Nickhautと呼ばれる。
上眼瞼と額との境界を示すのが眉毛(まゆげ)Supercilium, Augenbraueである。
これは眼窩口の縁の上方にある皮膚の隆起で、前頭筋と眼輪筋の線維を受けており、外側に向いた短く硬い毛が密生している(図650(左眼瞼裂(閉眼時)) 、図651(左眼瞼裂(開眼時)) )。
下眼瞼と頬との境界は、瞼頬溝Sulcus palpebromalarisという不明瞭な皮膚の溝によって示されている。
眼を開いているとき(図651(左眼瞼裂(開眼時)) )、上眼瞼に横走する深い皮膚の溝が特に顕著に認められる。これは前頭眼瞼溝Sulcus frontopalpebralisと呼ばれ、眼を閉じているときには浅い溝としてのみ見られる(図650(左眼瞼裂(閉眼時)) )。これに対応して下眼瞼にあるのが瞼頬溝Sulcus palpebromalarisで、下方を見たときにより明確に現れる。また、上眼瞼の中央を上眼瞼溝Sulcus palpebralis superior、下眼瞼の中央を下眼瞼溝Sulcus palpebralis inferiorが走っている。
日本人では上眼瞼溝が多くの場合(76%、ONishi)眼瞼縁のすぐ上方にある(Adachi、MitteiL med. Fakultät Tokio、1906)。(藤田恒太郎:生体観察(1952)114~121頁に日本人の眼の特徴がまとめてある。)