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目次(III. 脈管系)

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RK618(心臓:前面)RK619(心臓:横隔面)RK620(線維輪と線維三角:水平断面図)RK621(閉鎖状態の心臓の諸口と弁)RK622(心底)RK623(右心房と右心室を開いたところ)

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RK618(心臓:前面)

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RK619(心臓:横隔面)

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RK620(線維輪と線維三角:水平断面図)

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RK621(閉鎖状態の心臓の諸口と弁)

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RK622(心底)

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RK623(右心房と右心室を開いたところ)

右心房は2つの主要な静脈—上大静脈(V. cava cranialis)と下大静脈(V. cava caudalis)—から流入する血液を受け取る。また、心臓壁の太い静脈である冠状静脈洞からも少量の血液を受け入れる。前部には右心耳(Auricula dextra, rechtes Herzohr)が突出し、大動脈の前を通って左に向かい、肺動脈に達する(RK618(心臓:前面)RK623(右心房と右心室を開いたところ) )。

右心耳は本来の心房であり、三角形でやや扁平な形状を呈し、縁に微細な鋸歯状の凹凸がある。内面には筋肉の小梁が軽度に突出しており、これを肉柱(Trabeculae carneae)と呼ぶ。本来の心房と大静脈洞(Sinus venarum cavarum, Hohlvenensack)との境界は、斜走する筋の隆起である分界稜(Crista terminalis)によって明確に区分される。これに対応して外表面には浅い溝、右心房分界溝(Sulcus terminalis atrii dextrii)が存在する(RK619(心臓:横隔面) )。

大静脈洞は元来、独立した空間で、心臓に流入する血液を受け入れる場所であった。後に本来の心房と融合して単一の空間を形成し、分界稜と分界溝がその境界を示すこととなった。

上大静脈は2cm幅の開口部を持ち、心房中隔の前部に接して心房上壁を貫通している。そのため下前方に向かう経路をとる。一方、下大静脈は上内側に向かう経路をとり、3~3.5cm幅の開口部を持って心房後下部に流入する。これら2つの大静脈の開口部間で心房壁がわずかに陥凹している。内面では、この部分が軽度の隆起、すなわち静脈間隆起(Torus intervenosus)を形成している。

心房底部の下大静脈前方には**(右)房室口**(Ostium venosum [dextrum])があり、右心室へと通じている(RK621(閉鎖状態の心臓の諸口と弁) )。房室口は楕円形で、直径約4cmである。右心房にはこの他にもいくつかの開口部がある。冠状静脈洞の開口部は円形で、ここに半月形の冠状静脈洞弁(Valvula sinus coronarii)(RK623(右心房と右心室を開いたところ) )が見られ、心臓後壁の下大静脈開口部と房室口の中間に位置している。さらに、いくつかの小さな開口部があり、これらを細小静脈孔(Foramina venarum minimarum)と呼ぶ。その一部は袋状の陥凹で盲端に終わり、他は心臓壁の小静脈の開口部となっている。

左上方には心房中隔がある。この中隔下部で下大静脈開口部近くに楕円形の陥凹、卵円窩(Fossa ovalis)が存在し、ここでは中隔が薄く半透明となっている。卵円窩は胎生期に心臓中隔に存在した開口部の痕跡である(RK619(心臓:横隔面) )。卵円窩を取り囲む厚い隆起は筋肉で裏打ちされており、卵円窩縁(Limbus fossae ovalis)と呼ばれる(RK623(右心房と右心室を開いたところ) )。成人では、ここに左前上方に向かう裂隙状の小通路が左心房に達していることがしばしば観察される。

卵円窩の前下端から連続して左右方向に伸びる半月状のひだ、下大静脈弁(Valvula venae cavae caudalis)(RK623(右心房と右心室を開いたところ) )が突出している。このひだは右下方に向かって下大静脈開口部の前縁に達している。

このひだは胎児では非常に大きく、下大静脈からの血液を卵円孔(Foramen ovale)へ導く役割を果たす。成人では極めて小さくなったり、あるいは著しく大きくてのように多数の小孔が開いていることもあり、完全に消失していることもある。