https://funatoya.com/funatoka/Rauber-Kopsch.html
眼動脈は小翼突起の内側で、内頚動脈の最後の弯曲の凸側から分岐する。視神経の下外側または下内側に沿って、蝶形骨の視神経管を通り眼窩に至る。
通常、視神経の下でまず外側に曲がり、次いで弓状をなして視神経の上を越える。眼窩の内側壁に達し、上斜筋の下で緩やかに蛇行しながら前方に進む。内眼角の近くで上下に分かれる2本の終枝、内側前頭動脈(A. frontalis medialis)と鼻背動脈(A. dorsalis nasi)となる。つまり、眼動脈は視神経の周囲でらせん状を呈し、その途中で多数の枝を出す。
視神経の下を走行するのは、ヨーロッパ人では15%、日本人では6.1%である(Adachi)。
a) 網膜中心動脈(A. centralis retinae):細い血管で、眼動脈から出る最初の枝である。単独で、あるいは内側の眼球中膜動脈と共に、眼動脈が上方に曲がる箇所から分岐する。通常、眼球からわずか0.6〜0.8cm離れた位置で、下方から視神経の実質内に入り、その中軸を通って網膜に向かい、そこで多数の細い枝に分かれる。
b) 涙腺動脈(A. lacrimalis):視神経の外側で眼動脈の後部から起こり、外側直筋の上縁に沿って走行し涙腺に至る。数本の枝が付近の眼筋に向かう。終枝はさらに前方に向かい、眼球結膜と眼瞼に達する。1本あるいは2本以上の小枝が頬骨を貫いて側頭窩および眼瞼に至る。これを外側眼瞼動脈(Aa. palpebrales temporales)という。これらは少数の枝、すなわち結膜小枝(Ramuli conjunctivales)を結膜に与える。
涙腺動脈の中央部から1本ないし数本の硬膜枝(Rami meningici)が出て脳硬膜に達する。その際、上眼窩裂あるいは硬膜眼窩孔(189頁参照)という特別な管を通って頭蓋腔に入る。頭蓋腔内でこれは中硬膜動脈の枝と吻合する。
c) 筋枝(Rr. musculares):筋枝はその配置にある程度の個体差がある。一部は眼動脈から直接発し、一部はより大きな枝からさらに分枝して出る。多くの場合、かなり太い上枝と下枝がそれぞれ1本あり、これらから個々の枝が出て、眼窩の上部と外側にある筋は上枝により、下部と内側にある筋は下枝によって養われるのが通常である(Arnold)。また下枝のほうが上枝よりも太いことが多い。
毛様体小枝(Ramuli ciliares)は主に眼動脈の前方部の筋枝から分かれ、角膜縁のやや後方で強膜に入り込む。すべての毛様体動脈は眼球内で互いに数多くの吻合を形成している。
強膜上小枝(Ramuli episclerales)は毛様体小枝から出る。これは強膜の最外層で広い間隙を持つ網を作り、この網が脈絡膜動脈とつながり、また結膜小枝(Ramuli conjunctivales)を眼球結膜に与えている。
d) 眼球中膜動脈(Aa. tunicae mediae oculi):この動脈は内外両側の2本の枝として眼動脈の幹またはその後方部の枝から出て、たびたび分枝しながら視神経の両側を蛇行しつつ前方に進み、視神経が眼球に達する周囲で強膜を貫通する。
[図643] 眼動脈とその枝(1/1)
左眼窩を示す図。前頭洞と篩骨洞を上方から開放し、海綿静脈洞の内容を明示するため硬膜の外葉を除去している。
α) 脈絡膜動脈(Aa. chorioideae)は12~15本あり、視神経が眼球に達する付近で眼球内に入り、脈絡膜(眼球中膜)に至る。
β) 虹彩動脈(Aa. iridis)は2本あり、外側虹彩動脈(A. iridis temporalis)と内側虹彩動脈(A. iridis nasalis)それぞれ1本ずつである。これらは脈絡膜動脈とともに眼球内に入り、強膜と脈絡膜の間を前方に進み、毛様体と虹彩に達して初めて枝分かれする。
e) 外側前頭動脈(A. frontalis lateralis)は、上眼瞼挙筋の上で、眼窩の天井近くを眼窩骨膜の下に密接して前方に走り、外側前頭孔または外側前頭切痕に至る。