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目次(III. 脈管系)

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(RK647(前胸壁と前腹壁の動脈)RK669(骨盤右半分の動脈分枝(左側面図))RK674(大腿動脈とその枝(II)))

この動脈は外腸骨動脈の終末部前壁で、鼠径靱帯からわずか0.5cm離れたところで始まる。そこから上内側に曲がり、腹横筋膜と腹膜の間を通って腹直筋の後面に進み、腹直筋鞘に入る。ここでほぼ真っ直ぐ上方に走り、臍の上方で複数の小枝に分かれて終わる。これらの小枝は腹直筋内で広がり、内胸動脈の終枝および下部肋間動脈と吻合する(RK647(前胸壁と前腹壁の動脈))。

この動脈は腹膜下鼠径輪の内側縁に沿って走るため(RK499(前腹壁下部の内側からの解剖図))、腹横筋膜の鞘状突起と交差する。このとき、精管はこの動脈の外側を越えて曲がっている(RK669(骨盤右半分の動脈分枝(左側面図)))。

a) 恥骨枝 R. pubicus:小さな1本の枝で、裂孔靱帯の内面を下方に向かい、恥骨の後面およびこれと結合している諸部に広がる。また、閉鎖枝 R. obturatorius という1本の枝を出して閉鎖動脈の恥骨枝と吻合する。

この吻合からしばしば閉鎖動脈が異常起始を示す(閉鎖動脈の項、618頁参照)。この場合、通常位置の閉鎖動脈が非常に細く、下腹壁動脈の閉鎖枝が太くなっている。

b) 挙睾筋動脈(精巣挙筋動脈) A. m. cremasteris(RK673(大腿動脈とその枝(I))):細い動脈で、内鼠径輪の近くで始まる。この輪を通るか、あるいはより頻繁に特別な隙間を通って鼠径管に達し、精索に伴って血液を挙睾筋および精索のその他の成分に供給しながら下降し、精巣に達して精管動脈および精巣動脈と吻合する。その外方への枝は陰嚢動脈と吻合する。女性では、これに相当するものが子宮鼠径索動脈 A. chordae uteroinguinalis(子宮円索動脈 A. lig. teretis uteri)であり、子宮鼠径索と大陰唇に分布する。

これらの比較的太い枝のほかに、下腹壁動脈の幹からは多数の筋枝が周囲の諸筋に出ており、また皮枝も出ている。この皮枝は腹直筋およびその筋膜を貫いて皮膚に達し、その関係は内胸動脈の穿通枝と同様である(RK647(前胸壁と前腹壁の動脈))。さらに、若干の小枝が尿膜管に沿って膀胱に達し、また肝鎌状間膜の中で肝臓に至る。